スコープ越しの頭脳戦




 死んじゃいない。

 が、動きも無い。

 「………妙だな。」

 つい、呟いてしまった。

 「!やっぱり先輩も依頼内容気になってるじゃ……」

 ペチッ

 「違ぇよ。

 さっきっから連中、全然動きゃしねー。」

「そりゃぁ、狙撃にビビってるからで……」

 「あの手の連中は狙撃されたら隠れてい居られずに直ぐに飛び出して強行突破か見切り発車でこっちに石ころ投げて来るんだよ。

 狙った感じ、この手の仕事はそんなにやった事のねェ感じの奴等だったし、直ぐに出てくっと踏んだんだが………」

 姿勢を低くしながら壁際を移動している?

 「おいレン!」

 「何っすか⁉」

 レンが俺の声にビビった。

 危ない危ない。

 「いや、おこっちゃねーよ。

 ただ、お前に訊きたいんだが、俺が撃った後、フロア全体を見ていたんだよな?」

 「はい!瞬き一つせず、動く物があったら直ぐ気付く様に、首から上を微動だにせずに見てたっス!」

 別に、俺に嘘を吐いている様子は無い。

 「何か動いているのを見たか?扉とか、階段辺りに走り込む奴とか。」

 「いえ、誰も居なかったっす。何も動いてないっす。」

 レンの視力と視界の広さは折り紙付きだ。

 校舎ワンフロア程度なら余裕で俯瞰出来る。

 レンが『動きが無い』つって言ってるって事は……

 「レン、奴等を炙り出すから、少しでも動いた奴が居たら教えろ。奴等は未だ壁際に潜んでる筈だ。」

 ウィリイアムを構える。

 「ジャリスさん!流石に設備をぶっ壊すのは不味いんじゃ………傷どころかウィリイアムなら蜂の巣……いや、粉微塵じゃぁ………。」

 ウィリアム・テラーの弱点。それは絶え間無い連射が出来ない事だと言われている。

 が、

 「出来無いって言われてる。が、実際に出来る奴がここに居るんだよ。」

 懐からウィリアムの弾丸を10発程取り出し、空中に放り投げ、同時にウィリアムを構える。

 パン

 装填済みの一発を、校舎の、奴等の居る階の窓ガラスにぶち込む。

 衝撃で銃口が上を向き、空中に放り投げられていた弾が丁度良い具合に銃口に入り込み、弾が装填される。

 パン

 隣の窓ガラス目掛けて撃つ。

 またしても衝撃で銃口が上を向き、空中に放り投げられていた弾が丁度良い具合に銃口に入り込み、弾が装填される。

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 空中に投げ出された弾は残り一発。

 それが銃口に飲み込まれるうちに更に懐から弾を放り投げ

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 パン

 校舎の窓ガラスがワンフロア分、丸ごと無くなってしまった。


 「レン、動きは?」

 「無いっス!本当に居るんですか?あれだけ受けて慌てて逃げずにいるなんて有り得ないっス。

 もしかしたら転移魔法的なのでトンズラこいたんじゃぁ……」

 「良いから黙って見とけ。

 少しでも動いたら俺にすぐ言え。」

 「わ、解りました。」



 この、僅か十数秒の間に校舎の窓ガラスはフロア一つ分無くなり、教室の壁には幾つもの痛々しい破壊痕が残った。





(さぁ、コッチの手は曝した。如何する?)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る