提案
「どうします?
このまま行けば貴方達は間違いなく殺されます。
その壁に残った痕を見れば、貴方達を狙う方々が、遊びや気絶程度の結末を望んでいない事は御理解頂けますよね?」
窓の真下。伏せた状態で男達にシェリー君は言った。
その言葉に男達が体を震わせる。
教室側の壁に減り込んだ弾丸………破壊の痕跡からしてどちらかと言えば杭か…杭が撃ち込まれた破壊痕は、撃ち込まれた場所だけでなく、その周りにまで破壊を及ぼしている事を教えてくれる。
生半可でない威力で撃ち込んだ事は明白だ。
そして、避けなければ、シェリー君が彼らを転ばせて避けさせなければ、その杭が自分達の頭を砕いていたであろう事は明白。
これ以上無い説得力が有っただろうさ。
「探索するにしろ、逃げるにしろ、一度この場を離れなければ相手は確実に次の手を打って来るでしょう。
先ずは互いの安全確保の為に動きませんか?」
その提案相手がどんなに不安要素を持っていても、この状況で断れば最悪の事態有るのみ。
「ヌゥ……拒否権は無しか。」
男達は各々渋い顔をして考えているが、時間は無い。
「急かす訳では有りませんが、実際時間は有りません。
狙撃手以外に校庭側にも鎧を纏った方々が来ているようです。」
そう言って、教室側の向こう、校庭を示す。耳をすませば校庭の方からガヤガヤガチャガチャ音が聞こえる。
このまま行けば狙撃だけでなく、下から上って来る鎧兜で武装した騎士達と事を構えなければならない。
音から察するに、普通なら、5人+1人で対応出来ない程の騎士と。だ。
「私は逃げますが、どういたします?」
しれっと最早人質でなくなっているシェリー君。
「んー……この娘の話に乗らない奴は居るかのー?」
小柄な肥満男が他の連中に意見を求める。
冷静になり、自分達を必死になって守った人間の魅力的な提案を拒否する者は居なかった。
「ヌゥ、決まりだな。」
「で、どうするのかニー?」
「ネェネェネェ、そう言えば一人寝てるけど……良いの?」
そう言って猫背の男が指差した先はシェリー君が最初に引っ繰り返した男。
「そうでした!起きて下さい!起きて!逃げますよ!ここに居ては危険です!」
平手打ちを容赦無くシェリー君が叩き込む。
バッバッバッ!
音が最早平手打ちというか、殴っている様な音に聞こえる。
あぁあぁ、コレでは逆に脳が揺れる。最悪、
「ん?なんだ?もう朝………なのかナァ?」
顔が気絶前より二回り大きくなり、顔全体をトマトの様に真っ赤にしながら長身痩身の男が目を覚ました。
拳闘術を変に教え過ぎてしまったようだ。
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