狙い撃ち


「ヌゥ……ガキ!」

「ちょっと、大人を舐め過ぎかニー」

「ねぇねぇねぇ、痛い目見る?」

「今のは何かのー?」

シェリー君の突然の行動に、後頭部をしこたま地面に叩き付けられた長身痩身以外の連中が凄む。

「伏せて!」

しかし、その威嚇は伏せながら下から見上げる様なシェリー君の眼光と迫力の前に掻き消された。

4人が言葉に怯んで一瞬固まる。

呑気に立ち上がって………全く、何をしているのやら?

「お前」「何を」「言って」「る……?」

 未だに何が何だか解らずに突っ立っている4人。

そうしている間に光の影が4人に迫る。

「伏せて!」

間に合わないと踏んだシェリー君が伏せたまま腕を振って袖口から石を飛ばす。

 ただの石では無い。お馴染み、学園傍の雑木林の蜘蛛から取れた糸を加工した便利糸付きの石である。

 投げつけた糸は4人の頭へ命中………しなかった。

 投げたのは男達の二の腕の横、そうして糸は伸び、一番後ろに居た猫背の男の背後まで糸が届いた途端、糸を思い切り引っ張り…………

 「ねぇねぇねぇ、ちょっと体に糸が……」

猫背の男の体に糸を巻きつけた。


 『肉体強化』


 腕力を魔法でブーストし、思い切り引っ張り。

 「「「「ドワッ!」」」」

 一番後ろの猫背を強引に前のめりに倒し、そのまま前に居た三人を将棋倒しにした。


バキィ!


 丁度男達が倒れた直後、光の影は炸裂した。


 「ヌゥ…………ガキ、何をした?」

 中肉中背の男が伏せたまま、シェリー君を睨みつける。

 「この状況を見て私が何かしたように見えましたか⁉」

 シェリー君が息も絶え絶えで睨み返す。


 この状況。

 ・教室側の壁には風穴×2

 ・窓ガラスが破損×2

 どう見ても狙撃だな。

 「窓が割られ、教室側の壁には何かで穿ち、抉られた様な痕。これはどう見ても、窓の外からの狙撃でしょう⁉ここにいる私がどうして狙撃なんて出来ますか⁉」

 シェリー君が伸びている長身痩身を地面に叩き付けていなかったら、今頃この男は良くて頭に風穴。悪ければ首から上が無くなって猟奇殺人事件の現場確定だった。

 4人の方も転ばせていなかったら同じ様に猟奇殺人事件確定だった。

 様は

 「お前がやったんじゃないのかの-⁉」

 「そうだニー。なんで狙撃されるって前もって解ったんだニー⁉」

 「ねぇねぇねぇ、君が狙撃手とグルなんじゃぁ無いの?」

 4人共疑いの目を躊躇い無く向けて来る。

 「………………ハァ、私が一体何故、狙撃手とグルなのですか?」

「そりゃぁ」「俺達を」「始末して」「助かる為……」

「では何故、貴方達が狙撃されるのを私は阻止したのでしょうか?」

「「「「ッ!」」」」

一瞬にして黙らされた。

狙撃でこの5人が始末されて得するのはシェリー君。

しかし、わざわざそれを阻止した時点で味方説は破綻する。

 「それに、狙撃に関しては、ちゃんと兆候が有りましたよ?」

 「「「「???」」」」

 窓際の壁に体をぴったりと張り付けながら4人が首を傾げた。

 「貴方達の武器は木製2つに金属製2つ。そして素手。

 教室の壁に金属が陽光を反射して出来た光の跡は3つ在り、一つは動いていました。

 私達はその時動いていなかった・・・・・・・・・にも関わらず・・・・・・。です。

 では、その光を発生させている主は何処に居るのでしょう?答えは窓の外。

 宿舎の部屋でしょう。

 しかし、緊急時には生徒は校庭に集められます。

 立て籠もり犯が学園に居るのです。もしかしたら、何かしらの飛び道具で貴方達を制圧するために狙撃手が狙っていても不自然では有りません。

 しかも、その光が人間を追いかける様に動いていたのです。

 間違いないと思いました。」


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