かいてきなたび 16

学園の中で、様々な小娘に出会った。

誰も彼もがふざけているとは思っていた。

シェリー君に危害を加えようと拙い企てをする輩。

シェリー君を陥れようと穴だらけの画策をする輩。

隠そうともしないで敵意を向ける輩。

そのどれもこれもに対して、腹が立たない訳では無かった。

が、小娘の敵意と思って笑って流していた。私が必要以上に干渉する訳にもいかない。彼女が成長する糧にでもなって貰おう……………そう思っている。

が、

目の前の輩は

『積み荷と女だけを置いて消えれば良いだけだ。』

と言った。

奴にとって、シェリー君は積み荷同様の商品という認識。金目の物という認識だった。

私の教え子に対して金目の………物?

舐めるのもいい加減にしろ。というものだ。

私とて、聖人君子では無い。怒る事も有る。

相手は40人。

武器を持っていて、地の利は向こうにある。

シェリー君込みでも4人で有るならば、それは厳しいだろう。

と、いう事で、

「シェリー君、交代だ。

今から一対多数の戦い方を見せてあげよう。

今まで幾つかの環境で色々と見せては来たが………この人数は初めてだ。そうだろう?」

「はい……ですが…………」

「見ていたまえ。

40人程度ならあっという間に始末する方法が有る。見せてあげよう。」

シェリー君にそう言いながら馬車から降り、近くに有った石を拾い上げる。

「………解りました。」

馬車から降りた私(シェリー君)を見た三人が困惑しつつ叫んだ。

「シェリー!何ボヤボヤしているんだい⁉」

「早く逃げて下せぇ!」

「逃げてくれよぉ。」

三人がそう言って周囲を警戒する………。

その心意気。

シェリー君を守ろうという心意気だけは褒めてやろう。

「おいおい、お嬢ちゃん…何する気だい?

俺達は紳士だからよ。別に大人しくして居れば悪い様にはしないぜ?」

見え透いた嘘を………。

私の前で嘘は吐かない方が良い。

直ぐさま露見して報復を受ける事になるのだから。

「皆さん、馬車に乗って下さい。

合図をしたら真っ直ぐに走って下さい。」


「ハァ⁉」「何言って」「いるんだよぉ?」


静止しようとする三人を掻き分けて前に出る。

「おいおい、何だい?

これ以上の慈悲なんて期待しても無駄だぜ?」

慈悲だと?よくも恩着せがましく、その上いけしゃぁしゃぁと嘘を重ねられる。

「慈悲など……………(無いに決まっているだろう)。」

さぁ、久しぶりに本気で暴れるとしようか。

最近は……ここ数日は特にシェリー君が張り切ってくれたから…………な。

だが、

一人を相手にする際と大勢を相手にする際では戦法が大きく異なる。

シェリー君にとって、これは初めての一対多数戦。ここは私がやって見せよう。40人では少し敵役としては桁も実力も何もかもが足りないが…………まぁ良いだろう。

久々の出番だ。張り切ってやらせて貰おう。





慈悲など無い。

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