門は再び開かれる

 あぁ、「それからどうなったか?」かね?


 あの後、どうやらナクッテ嬢や剣嬢はミス=フィアレディーに回収されたらしい。


 両者共に当然だが軽傷。


 直ぐに話を聴けるようになった。


 元々こちらの正当性に疑問を抱かせない様に軽傷になるようにしていた。


 そして、話を直ぐに出来るようにして、速やかな三者の排除は目論んでおいたとも。


 速やかな始末は報復を未然に防ぐからね。








 そして、事情聴取や現場検証を行ったところ、鉄剣・覆面という物的証拠。彼女らの『ミス=パウワンに脅されてやらされた。』という半分以上が嘘の証言。が得られた。


 それらを証拠にパウワンは呆気無く失脚………する訳が無かった。






『これは陰謀だ!あのガキ共三人がグルになって私を嵌めたんだ!』






脳筋の悪足掻きはシェリー君にまで及んだ。


が、それらには正直無理があった。と、言う事で……………






『淑女を教える者としてあるまじき言動、野蛮な行為。


最早貴女にはここに居る資格は御座いません。


即日この学園から退去しなさい。』






クビが宣告された。








そして……


「あなた方もです。


凶器を用いて人を害するなど淑女以前にあっては成らない事です。


ミス=パウワンとミス=シェリーを陥れる事もまた然り。


貴女方にもここに居る資格は有りません。」








ナーク=テ=ヨルダン(ナクッテ嬢)………退学




エスパダ=ソド=エジール(剣嬢)………退学




パウワン=デン=ボクムズ(脳筋)………解雇








三者はこの学園から永久に締め出される事となった。












「………………これで……良かったのでしょうか?」


三人の結末を聞いたシェリー君はそう言った。


少しだけ、罪悪感が有るのだろう。




が、私はあえてこう言おう。




「君にはあの時幾つかの選択肢。可能性があった。




先ず、剣術の授業で怪我を負わされて利き手を主とした軽くない負傷を負わされる事。


この場合、『怪我で授業を受けられない』・『利き手を使えず勉強の能率が落ちる』という、こちらが退学の危機に陥る危険が待ち受けていた。




次に、ナクッテ・剣嬢を何とかいなせても脳筋が居た。


あの教師曰く『黙って体罰を受ければ良い』らしいから、それに従っていた場合、君は本当に命の危機が有った。


これは退学以前の問題だ。




そして、夜に起きたあの事件。


あれは皆鉄剣装備で居た事も有り、到底怪我では済まなかった。


これも本当に命の危機が有った。




どうかね?


私が選択した方法には誰一人死人は出なかった。


これが最も良い方法であった。」


「………………………」


「もし、退学に追い込まなければ、ナクッテ嬢、剣嬢は更に君に危害を加えようとする。


脳筋は君を目の敵にして成績に細工をするか、はたまた難癖をつけてまたしても体罰に持って行くか…………どの可能性を辿ったにしろ、君には選択肢は有って無かった。


東洋にはこんな言葉がある。『悪因悪果』。


要は、『悪い事をしたら悪い事が自分に跳ね返って来る。』という事だ。


彼女達の退学と解雇は彼女達の行った愚行の対価。


それは君がやった事では無い。」


「…………………………………そうですか?」


「それとも、君は彼女達を陥れようとしたかね?彼女達を焚きつけて暴力に導いたかね?」


「いえ!そんな事は一切!」


萎んだ花のようになっていたシェリー君が復活した。


「なら、君は何も悪い事をしていない。悪い事をしたのはむしろ向こうだ。


誰も君を責めない。というか、責める理由は無い。」


「はい!」


「では、勉強に戻りたまえ。」


「はい。」




そう言って彼女は机に戻っていった。




その顔には先程の様な自分を責める様な様子は無かった。








私は彼女を置いて外に出て行った。




















ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!


大きな音を立てて、門が開かれる。


その先。学園の外には馬車が待っていた。


上等な馬車だった。








今回は前回と違って三台あった。








ナクッテ嬢と剣嬢は項垂れ、脳筋は目こそ猛獣の様な光を持っているが、身体はボロボロで杖を突いていた。


「ミス=フィアレディー。失礼いたします。」


「ミス=フィアレディー。お世話になりました。」


生徒二人はそう言って頭を下げた。


「コれで終わりだと思うな!絶対私は戻って来る!あのガキに伝えとけ!絶対絶対絶対!」


「あなた達は最早この学園の人間ではありません。速やかにお引き取りを。」


冷静に止めを刺すと門を閉ざした。












ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!












取り敢えず、この学園内でのシェリー君の安全は保障される事を祈ろう。








例え、それが叶わずとも私がシェリー君を必ず守ろう。












そう心に決めて私はシェリー君の元に戻っていった。




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