愛すべき姑息な人々 2 姑息な恋人たち

清泉 四季

第1話 高1 三月 ライン

「友香のラインは素気なさすぎる!」


 最近めでたく付き合うことになった私、一色いっしき友香ゆかは、彼氏の金城かねしろあきらくんに厳しい指摘をうけた。

 通う高校が違っていて、なかなか会えないので誤解とか変な勘違いをしないように、『思っていることはちゃんと伝えよう』と約束したとたん、こうきた。


「えっ、そう?」


「そうだよ!友香からはほとんど来ないし、週一がいいとこだし、返事はOKとかはいとか二文字だし、♡はついてないし。」


 はぁ、そんなに不満に思っていたのか。申し訳ない。


「ごめんね。私、ラインの終わらせかた苦手だし、男の人って、用もないラインは好きじゃないって聞いたから。」


「それ、誰の情報?」


「マホの元カレと、マドカの元カレと、桃華ももか先輩。」


「桃華さんはともかく、上手くいかなかったやつに聞いてどうするんだよ。」


「ちゃんと、必要な約束の日時や場所は伝わってるじゃん。」


「髪を切った時も一切連絡なしで、ショートヘアで現れた時は度肝を抜かれたよ。」


「これ、バスケ部の作戦で切ったの。」


「君、弓道部だろ?」


「ほら。ラインだと、長すぎて伝えられないよ。ちゃんと会った時話すから。私その時、目の前にいる人を一番大切にしたいの。」


「それだと、僕は週に一回くらいしか大切にならないの?」


「啓くんは彼氏だからずっと大切だよ。でも、ほら歌で、逢いたくて逢いたくて震えるっていうじゃない。私、震えてる啓くん好きなの。」


「もう、しょうがないなあ♡。でも、友香も震えてるんだろうね?」


「めっちゃ震えてるよ。」


 結構面倒なやつだな、啓くん。それならこれでどうだ。


「お母さんにも、息子が延々と彼女とラインしてるのを見たら、向こうのご両親はどう思うかしらって言われたし。私、啓くんのご両親に悪く思われたくないの。」


 思い切り桃華先輩の真似をして言った。


「わかった。お互い歩み寄ろう。ラインは週一は必ず自分から出す。始めた人が終わる権利を持つ。可能であれば♡をつける。というのでどう?」


「わかりました。」



 その夜、友香からラインがきた。

『月がとってもきれいだよ。啓くんも見てる?』

『月なんて出てないけど。』

『ごめん、このフレーズ使いたかっただけ。恋人同士が使いそうでしょ♡』

『あなたも私と同じようにあの月を見て物思いにふけっておられるのでせうか。』

『啓くん、古文勉強してたの?』

『君のこと考えてたよ。』

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