第140話 暗がりを歩く

出口の見えないトンネルにいるみたいだ

ただぼんやりと浮かぶ灯りを目指し

重い足を引きずり歩く

それでもその灯りすら

本当にあるものかさえ分からない

それなのにどうして

歩くのをやめられないんだろう


響く靴音さえむなしい

ひんやりと湿ったこの道を手探りで進む

その目的なんてもう

すっかり忘れてしまった

ただ歩く、ただ歩く、

進みたいわけでもないし

この先に何があるわけでもない

それでもただ歩く


きっと止まるのが怖いんだ

この道の先に何かがあることより

このままここで朽ち果ててしまうこと

それが何より怖いんだ

臆病者の僕には

歩くしか方法がなくて

疲れ切った足を叱咤して

この暗がりを進むんだ

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