第119話 泣けない僕を許して



きっといつも求めていた

冬の日にぬくぬくとあったまる毛布とか

薄暗い路地にふわりと灯る窓のあかりとか


心はこんなに求めているのに

それを認めることさえできなくて


泣けない僕をどうか許して


こわばった背中を優しく撫でる手の温度

その熱はじんわりと奥底を溶かすけれど

この体には美しいものなど眠っていなくて

やっとのことで流れ落ちた灰色に濁った涙


そんな僕をどうか許して

澄んだ目を持たないこの僕を




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