第117話 空っぽのペテン師

私はいつもこの手になにか大切なものを持っているかのような顔をして歩く


別に何があるわけでもない

スッカラカンの中身を隠してさも何かがあるように見せかけて


あまりにも笑えるけれど

そんなメッキで固めた素顔をさらけ出すこともできなくて

ひた隠しにした空っぽの私という器はいつも

いつ真実を暴かれるか怯えている


白い雲から覗く淡い太陽の光がどこか物言いたげで思わず目を伏せた

まだ誰にもこの秘密は知られたくなくて


空っぽのペテン師は

今日もまたごまかしながら歩いていく

空っぽの体で、嘘で固めたこの道を

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