第96話 空の青

たとえば頭の上に広がる空の青が

どこまでも果てしなく続くものだったとして

今この空の中を羽ばたき渡る鳥たちは

いったいどこを目指して翔んでいるのか


一面に広がる青に行く末を見失い

溺れることもあるだろうに


それでもなお飛び続けるというのは

純粋なのか果たして馬鹿なのか

そしてそれを馬鹿だと考える私は

どうにも手のつけようのない愚か者なのか


そんな愚か者の私ではあるが

できることならば空に溺れてしまいたいのだ


手を広げても届かない青に全身を踊らせ

吸っても足りない薄い空気に喘ぎながら

それでもただ純粋に空の青に身を委ね

果てしない宇宙に溶けてしまいたいのだ


それなのに永遠に続く空の青を信じることさえ

今の私にはどうしたって難しくて

砂埃とアスファルトの熱にまみれた

絶望の味をたたひたすら噛みしめている

この地で足を踏みしめながら

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る