第35話 秋の日

ただ単に、時が過ぎたという訳ではない


そこには見知らぬ必然があり

ぼろぼろになりながら一つの季節を終え

傷だらけのまま新しい季節を迎える


そうしてやってきた秋の

雨に濡れたキンモクセイの香り


寂しいでもなく、嬉しいでもなく、

ざわつく胸が気持ち悪くて

生々しいほどの雲を見た


雲と雲の間に生まれる深い影と

隙間から差し込むかすかな光


この痛みは、なかったことには出来ない

それでもきっと、抱えて歩くことは出来る

灰色の道の上で見る景色は秋の色をしていた

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