第31話 透明な世界で

こんなにも世界が透明だから

汚れた私は呼吸すら忘れて

キラキラ光るその光景に

伸ばした手をそっと下ろした


触れたくないんじゃなくて

触れてしまうのが怖いだけ


この手は何もできないまま

もう痛みすら感じなくて

泣き出しそうな空を

ただ見上げているの


抜けないナイフはたぶん

私を縛り付ける楔で

にじむ血はまるでバラのように

からっぽな胸を染め上げる


こぼれ落ちてくるのは

きっとキレイなガラス玉

だからそれが濁らないよう

私はそっと目を閉じた

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