第17話 糸の月

暮れゆく日に手をかざし

夏が終わっていくのを見る

西の空を泳ぐ糸の月は

ほんの少し寂しそうで

なんとなく空へ手を伸ばした


掴めないオレンジ

届かない群青

そのとき不意に刻まれた言葉

「この手は何も生み出せない」


別にそれでも哀しくはなかった

何者かになれる自信なんて

とっくの昔に消え失せていて

浮かんだのは渇いた笑いと

なぜか頬を走る一筋の涙


こうやって季節が終わるのを

ただ体で感じていた

無力な手だけがここにあった



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