第3話 心を読むという魔法。

 どうやら、この生徒は読心術が出来るみたいである。

「スゲーよ!これが魔法なのか!」

「初めて見たけど、本当にタネも仕掛けもなさそうだね!」

 騒ぎはどんどん増し、教室中を巻き込む形になる。


「さあ、次は誰の心を読んで欲しい?」

 意気揚々と手を広げながら周りに尋ねると、騒ぎ声がもっと大きくなる。

 椅子に座った魔法使いの生徒は学ランを羽織るように着ており、中性的な見た目でパッと見男子か女子かよく分からない。

「そうだ、君の心を見てあげるよ」

 と、何故か遠巻きに見ていた私を指さした。

「え、私!?」

 群衆の注目が一気に私の方に向く。

「えーっと、名前なんだっけ?」

 どうやらその生徒は私の事はほとんど知らないらしい。

 本当に適当に選んだのだろうか。

「増田怜花…です」

「ふーん、そうか」

 生徒は目を閉じ、数秒考える素振りをして呟いた。


「『そんな急に心を読むって言われても…、何を考えていたらいいんだろう』てさ」


 !!

 確かに私はそう思ってた。

 一語一句合っているっていう訳じゃないけど、大体そんな感じだった。

「どう、合ってた?まあその顔を見たら誰でも分かると思うけど」

 そう言われて私は思わず顔に手を当てる。

 生徒は誇らしげに椅子に深く座り直した。



「この通り、僕は魔法使いだ。普通の人間とはちょっと違う特殊な能力『魔法』を使えるんだよ」

 生徒は周りを見渡しながら続ける。

「魔法使いってさ、色々噂とか流れてるけど殆どはデマで魔法が使えること以外はみんなと全然変わらないんだよ。

 ただ一つ、魔法以外で区別する方法があるのは『水銀を引き寄せる』ってこと」

 魔法使いはカバンの中からペンダントを取り出して机の上に置く。

 遠くからで良く見えないが、ペンダントの中に入っている液体状の物体は、その生徒に引き寄せられているみたいだ。

「まあ、こんなことだけしか人間と魔法使いは変わらない。化物のなり損ないとか、呪いがかけられているとか、全部うそ。

 僕がみんなに知って欲しいのはそういうことなんだよね」

 と、生徒の話が講演会のようになった所でチャイムが鳴り、先生が入ってくると周りの生徒は急いで自分の席に戻った。

 私も、直ぐに次の科目の教科書を取り出した。

 礼をして、他の生徒は教科書を開けてノートをとる準備を進めた。


 え、私?

 教科書を枕代わりにして夢の世界へ旅立ったよ。

 10分後に叩き起こされたけど。

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