2-2 暁久side.


「急にこんなこと...流石に引きますよね...!」


打ち明けたことへの恥ずかしさと怖れから笑ってごまかしてしまう。夏也が、男が、好きな自分を自分で恥じている。そんな自分が情けない。


少しの間をおいてお爺さんがまた優しい口調で話し始める。


「私は引いたりしないよ。人が人を好きになること、それの何が引かれることなんじゃ?同性間でも異性間でもそれは変わらないことなんじゃあないだろうか...?少年の場合は好きになった人がたまたま同性だったというだけの話。それは恥じるべきことではない、むしろ堂々としてていい。」


「ありがとうございます...そんなこと初めて言ってもらいました...今までこのことは誰にも話したことがなかったので...今まで男を好きになることは恥ずかしいって思ってはいけない、と考えながらもずっと思ってしまっている自分がいました。」


そんなに多くはない言葉だったけれど、お爺さんの言葉は心からの言葉であることが伝わってきた。とても嬉しかった、”男が好きになること”は恥ずかしいことではないときっぱりと言ってくれた。なんだか少しばかり、心が軽くなった気がする。もう少しだけ、このお爺さんに話してみようと思う。


「俺、好きなやつに告白する勇気がない意気地無なんです。告白して嫌われたらどうしようとか、素のままの関係でいられなくなったらどうしようとか、俺の思いで相手に迷惑をかけたらどうしようとか、そんなことばっかり考えてるんです。愛されたくて、嫌われたくなくて、そんな思いがずっと頭の中でぐるぐるしてるんです。」


思いを全て言葉にできなくても、今思いつく限りの言葉でお爺さんに伝える。


「それが”好き”ってことなんじゃないかな。少なくとも私もそうだったから。私も男の人を好きになった。毎日毎日、いま少年が悩んでいることと同じような悩みを抱えていた。社会人になって少し経った時だったかな、私は同期の彼のことを好きになった。彼は仕事がよくできてコミュニケーション能力にも長けていてねえ、同期とは思えないほどだったよ。彼とは正反対で、私は仕事が全然できなかったんだ。そんな彼は僕を心配してだったのかな、よく飲みに誘ってくれたんだ。そんなうちに彼のことが気なるようになっていったんだ。」

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