第20話:最近忙しくて辛い

「魔王様! 勇者です!」

「えー……またぁ?」


 今日3度目の勇者です……

 最近、メッチャ勇者が来ます。

 ちなみに比嘉には、お勤めに逝って貰いました。

 そのまま帰ってくるな!


「誰のせいですか! 誰の! 大体魔王様がいっつもからかって送り返すから、怒ってまた来るんじゃないですか!」


 そうなのだ……

 いま巷では、魔王は勇者を殺さない。

 挑みたい放題のレベル上げ放題キャンペーンって噂になっている。

 当然リピーターも多い訳で……


「今回は?」

「タラシ勇者と、インテリ勇者と、熱血勇者が同時進行中です!」


 そうなんです……もはや同時に複数の勇者がやってくる始末……

 誰のせいでこんな事に……

 ちなみにこいつら絶え間なく来るから、夜中もやってくる。

 一日中誰か来てる……辛い……


 ってことで!


「カインに遊ばせとけ……」

「またですか? 最近、魔王様サボりすぎじゃないですか?」


 辛いとか言っておいて、カインに殆どやらせてる。

 俺? 俺はほらっ、あれだよ! エリーやウロ子の膝枕での昼寝に忙しいし……

 チビコちゃんの相手とかもあるしね?

 まあ、たまには勇者に会ってみてもいいかな?


「ちなみに性別は?」

「全員男です!」


 はいっ、シューリョー!面倒くさい!

 誰が行くかボケェ!


「ですが、お仲間の方には女性も複数いらっしゃるようで……」

「行く!」


 めっちゃエリーが溜息ついてる。

 ジト目もゲット!

 よっしゃ、ちょっと勇者揉んでくっか!


「全員同時に来るようにしとけ、まとめて面倒みてやろう!」

「はいはい、分かりました」


 転移で玉座の間に移動する。

 いいねー、剣戟が近付いてるねー。

 久しぶりだこの感覚……久しぶりとか……別にサボってるわけじゃないよ?


「魔王! ついに見つけたぞ!」

「ちょっ、何仕切ってんだよ!」

「これだから熱血漢ってのは……」


 いきなり仲間割れか?


「今日は黒騎士様じゃなくて魔王か……ムカつくわぁ……あら可愛い狐」

「なんで魔王が居るのよ! ここ黒騎士様が居るんじゃないの? ああでも狐可愛い」

「私、今日初めて着いたのにー! てかあの狐可愛すぎない?」


 んっ? 黒騎士様ってなに?

 なんで、地味に女性から人気集めてんの?

 もしかして、勇者撃退ってモテるの?

 なんか、漲って来た!

 つーか、ウララ人気者だな……俺魔王やめて、狐になりたい……辛い


「ふっ……やかましい奴らじゃの……まとめて掛かって来い……3秒で物言わぬ躯にしてやろう!」

「こいつ、嘗めやがって! おい、一斉に行くぞ!」

「おい、だから勝手に仕切んなって!」

「1・2・3・4! はい4秒経った! 何3秒とか言ってんの? もう過ぎてんじゃん? ダッセ! マジださいんですけどー、つかもう10秒くらい経ってんじゃね」


 おいっ、インテリ勇者どこだ?

 馬鹿しか居ないぞ?

 取りあえず最後の奴は殺しとくか……


「フフッ……面白いなお主……名はなんという?」

「ふっ! 俺の事か? 俺はワキ・ヤクだ!」

「そうか、死ね!」


 俺がそう言って椅子に座ったま睨み付けると、馬鹿な事言ってた勇者が一瞬でこと切れる。

 今日のビックリドッキリチートマジック! 【大罰組デスノート】!

 相手の名前をノートに書くと死ぬよ!

 おー、こいつ経験値2万もあったわ……

 ムカついてつい殺したけど、レベルも1上がったしついでに他の二人も殺しとくか?


「インテリ勇者!」

「馬鹿な! 奴は動いてすら居なかったぞ!」


 こいつかっ!

 インテリ勇者居た!

 てか、どこがインテリなんだよ! お前ら全員馬鹿ばっかだな!


「つーか、タラシ勇者? 黒騎士様どこ? 黒騎士様に会えるっていうから付いてきたのに」

「いや、俺も知らねーよ! 大体みんな黒騎士に倒されて帰って来てるから、てっきりここに居るのかと」

「タラシ勇者嘘ついたの?」

「黒騎士様居ないならもう帰る!」


 あの3人はタラシ勇者の仲間か……

 インテリ勇者の仲間は……あかん呆然としてるわ……

 しゃーない……復活させて送り返そう……


「【強制送還リパトレイション】」


 取りあえずインテリ勇者の魂は戻して、パーティもろとも送り返したった……

 てか、こいつら全然じゃん!

 流石にそろそろここに来る前にふるいに掛けた方がいいか……


『おい、カイン……もう飽きたからお前が相手しろ』

『えー……最近一日中戦わさせられて疲れてるのですが?』


 マジこいつ、俺の事嘗めてるよなー……

 他の幹部は概ね絶対服従だけど、こいつだけチョイチョイ反抗してくる。

 まあ、関係ないけどね。

 強制召還でカインを目の前に呼び出す。


「はぁ……人遣いが荒い魔王様ですね」

「キャー! 黒騎士さまー!」

「やっとお会い出来ましたね! 私が貴方様の呪縛を解いて差し上げます!」

「お可哀想に……魔王の呪いでそのような事をされているのでしょう? 私には分かりますわ!」


 3人が色めき立つ……

 おいっ、3人目! 言っとくけどこいつ自分の意志で黒騎士やってるからな!

 ノリノリだからな!


「来たな! 人の癖に魔族に与する裏切り者め! 今すぐぶん殴って目を覚まさせてやる!」

「君が黒騎士か? さてと、女性達を惑わせる悪の元凶よ! 私が君を成敗してこの世の女性を独り占めにしてやろう!」

「この人類の敵め! 目に物を見せてやる!」


 熱血勇者の仲間の戦士だけやけに恨みがこもってんなぁ……

 つーか、タラシ勇者がただの女好きの件……

 黒騎士のがよっぽどタラシだわ……


「何勝手な事言ってんのよ!」

「黒騎士様は私が救うのよ!」

「黒騎士様を傷つけたら、一生タラシとは口利かないから!」

「この人類の敵め! クソッ! クソッ! なんでだよ!」


 やべー、いま熱血勇者の仲間の戦士とシンクロしそうになったわ……


「全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ!」

「全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ!」

「怒りの、ウォーリアスラッシュ!」


 ああ、やっぱり勇者の必殺技って【全てを斬り裂け!ブレイブスラッシュ】なんだ……ダサいわー……

 てか戦士……なんか哀れになって来たわ……


 二人の勇者の斬撃による衝撃波と、戦士の大地を這う斧の衝撃波が黒騎士を切り刻む。


「いやぁぁぁ!」

「なに、すんのよ!」

「黒騎士さまーーーー」


 お前ら応援する相手が違うから……


「やったか?」


 はいフラグどうも。

 やったかは、やってないのフラグだからね……


「フッ、残像だ……」


 そう言ってカインが3人の背後に瞬間移動する……

 勿論、対象が残像だった以上衝撃波はなんの障害もなく突き進む訳で……俺に……


 おいカイン……お前は俺を守る剣じゃないのか?


 3つの斬撃が俺を切り刻む。


「まさか! 魔王をやったか?」


 熱血勇者が叫ぶ!

 はいフラグどうも……


「フッ、残像じゃ……」


 ムカつくからカインの背後に移動してやった!

 あっ……俺の椅子……


 衝撃で俺の玉座が粉砕される……


 おのれぇぇぇぇ! カインめ!


「カイン? 椅子のお金はお前の給与から引いておくからな?」


 カインの耳元で囁くと、すげーゲンナリした顔してて笑えた。

 取りあえず来たかいあったわ。

 まあ、魔法で簡単に直せるから金かからないけど……


「くっ! こいつら主従揃って馬鹿にしやがって!」

「決めた、黒騎士を殺して魔王も殺す!」

「カッコつけやがって……どうせ顔は不細工なんだろ?」


 野郎3人がワナワナと震えている。

 てかタラシ! 貴方を殺して私も死ぬみたいなノリで俺を殺すな! ついでか俺は!


「黒騎士様流石です! もう、魔王は死ねばいいのに!」

「黒騎士様カッコいい! てか魔王とか同じことしてもダサいだけなのにね……」

「残像だ……あぁ、黒騎士様の残像で良いから抱かれたい……てか魔王の残像とかマジ吐き気するわ……」


 ビッチ3人が蕩けている……ここにもいたかビッチスリー


「全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け!ブレイブスラッシュ!」

「全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ! 全てを斬り裂け! ブレイブスラッシュ!」

「怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ! 怒りの、ウォーリアスラッシュ!」


 メッチャ必殺技連打してきた……

 てか、技名それ全部言わないと発動出来ないの?

 軽くゲシュタルト崩壊してきたわ……


「きゃーーーー!」


 そのうちの一撃がそれて女性陣の方に向かっていく。


「しまった!」


 あぁ、タラシ勇者が放ったやつか……

 てか部屋中傷だらけ……辛い

 絶対エリーに怒られる……辛い


 次の瞬間斬撃が向かった女僧侶の前に黒騎士が移動して庇う。

 そして弾かれるヘルム。

 露わになる顔……イケメンである。

 頬に一筋の傷が……


「大丈夫ですか?」


 気にせず振り返って微笑みかけるカイン……


「いや……ダメです……貴方に全てを奪われたい……せめてその綺麗なお顔に傷を負わせた罪だけでも償わせて……てか抱いて!」


 こ……こいつ……

 絶対わざとだ……

 そんな斬撃くらいで弾かれるような防具じゃねーぞ!

 てか、対物理防御のサポート切ったろ?

 だって、お前のステ上昇率でいったら裸で直撃しても、傷一つ負うはずねーじゃねーか!


「ほう……カイン……その程度の稚技で傷を負うとは、お主なまっておるのではないか?」


 最大級の覇気を開放して、カインを睨む。


「えっ……えっと、いえその……思ったより威力が……」


 タジタジである。


 バタッ!

 バタッ!

 バタッ!

 バタッ!

 バタッ!

 バタッ!


 あっ……あまりの覇気に勇者一行が気絶してた……


「さっ……流石魔王様ですね……威圧だけで倒してしまわれるとは」


 横でカインが何か言ってる。

 いや、お前許さねーよ?

 俺が見てないところで何やってたの?


 取りあえずカインの根性を鍛えなおす為に、チチカカミズガエルのエリザベートのとこに送り込んだ。

 1日でゲッソリして帰って来た。

 面白かった……

 完全に僻んでる自分が情けなくて辛い


***

 ちなみに巷では、カインは元勇者でありながら鎧の呪いで嫌々ながら俺を守ってる事になってた。

 呆れた事に、その噂自分で流してた。

 カインを倒す事で、鎧の呪縛が解かれカインが勇者に戻るって設定らしい……

 どうりで、最近やったらと女連れの勇者が来てたわけだ……

 こいつ、本当に俺が見てないとこで下らんことやってたわ……

 部下がアホで辛い


 インテリ勇者はなんか悟りが開けたとか言って、勇者辞めてどっか行ったらしい……

 あいつが何故インテリ勇者と呼ばれていたか……未だに謎だ……

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