手抜き
サンダルウッド
第1話「屈折思考」
眼球に何か
立派な接客はまず見た目から、という善人ぶったポリシーを時折口にして、毎朝少なくとも一時間半は鏡に向かって化粧に努める芳江を見るたびに、山城は哀憐や侮蔑や嫌悪などで
百貨店での化粧品売りというのはそういうものなのかもしれないと考え、最初の数年は目を
自らの睫毛が人並みよりもいくぶん長いことを、山城は人づてに知った。
学生時代のクラスメイトや友人の発言に、山城はその都度意表を突かれた。同居していながら母子と関わりに乏しかった父はさておき、人並みの愛情や過保護さを備えた母の口からは聞いたような気がしないでもなかったが、山城の記憶は実に
自身の器量が周囲の男たちと比べて劣っていることに、山城は幼いころからぼんやりと勘づいていた。小学生や中学生の時分、女子生徒に対して同じような言動をとったときに、自分に対する彼女らの反応が他の男たちへのそれよりも往々にして冷ややかなものであったことは内面的素養だけが理由でないことを察する程度には、山城は勘のいい子どもであった。
睫毛が長いか短いかということは瑣末な問題だった。
山城の次元では、そこの差異により局面が変動することはなかったのである。思春期を過ぎても
その感情は至極屈折しており、それにより話し手に対する礼節を損なうだけでなく自身の内部をも
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