第20話 光 八

 それから、僕が美玲と付き合い始めてから、僕たちは頻繁に電話するようになった。

 今は7月の終わり。ちょうど、大学の定期試験の期間だ。だから今はお互いに忙しく、どこか遠くへ行くことはできない。そのため、僕たちは電話でお互いの近況を語り合う日々を続けていた。

 「かずくん、元気~?勉強順調?」

「まあね。でも英語とフランス語、難しいな…。」

「そっか。私は生物学の試験があるんだけど、覚えることいっぱいで頭がパンクしそう…。」

そう、今まで気づかなかった、いや気づこうともしなかったのであるが、彼女は理学部。いわゆる「リケジョ」だ。ただ、彼女は文学にも興味があり、それで公開講義を履修しているらしい。

 そのため、

「何か理系女子って、かっこいいなあ~!」

と僕が言うと、

「そうかな?まあ私は何とか講義について行っているだけだけど…。」

と、彼女は照れながら返す。そんな他愛もないやりとりが嬉しくて、また彼女の電話ごしの照れを想像するとかわいくて、僕はもっとツッコミを入れそうになる。

 ただ、あんまりツッコミを入れすぎると、彼女が本気で怒りそうになるのでこの辺で止めておく。

 『これが…女の子、人と付き合う、ってことなんだな…。』

 僕は、そんなどうでもいいやりとりに、今まで見出そうともしなかった、喜びを見出す。

 本当に、彼女、美玲のことが愛おしくてたまらない。

 そんなことをふと考えていると、美玲の方からある提案が持ちかけられる。

 「そういえばさ~かずくん、1人でずっと勉強するのも疲れるし、明日は一緒に勉強しない?」

「おっ、いいねえそれ!」

僕は、その提案を二つ返事で了承する。

「じゃあ、大学南のファミレスに集合、でいいかな?

 あとちゃんと勉強道具も持って来ないとダメだよ~。今回は単なる遊びじゃないんだからね!」

「もちろん!」

 僕の気持ちの90%は美玲に逢うことに持って行かれているが、ちゃんと勉強もしないといけない。

 「でも、と言うかその代わり、と言うか、試験が終わったら、どこかに遊びに行こうね!

 遠い所に旅行に行くとか、ね?」

「分かった!せっかくの夏休みだもんね。一緒にどこかに行けたらいいね。」

「よし、それを励みに頑張ろう!」

ということで、僕たちは勉強へのモチベーションを(無理矢理)高める。

 そうしているうちに、次の日がやって来た。

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