第12話 闇 十二

 「あ、こっちですこっち!」

染谷さんは、僕を見つけるなりそう声を出して手招きする。

 そしてそこでも、僕たちは注目の的となる。

 『僕は、こんなにも悪い意味で目立つ存在なのか…?』

しかし注目される理由はそれだけではない。彼女…染谷さんは、講義室の外でも人気があるらしい。

 みんな、染谷さんに対しては、僕が経験したことがないような好意的な目を向けている。それに比べて僕への目線は…冷ややかなものだ。(まあそれには慣れているが。)

 「すみません、待たせましたね。」

「いえいえ、勝手に呼び出したりなんかして、こっちこそすみません。

 ちょっと、歩きながら話しません?」

彼女はそう言い、大学の外へと歩き出した。

 慌てて僕も、それについて行く。

 その時…僕のすぐ隣には、おそらく人気者であろう染谷さんがいる。

 その顔は、目はパッチリしているわけではないが、東洋風の美人、といった感じで、とにかく好感の持てる顔立ちだ。

 また、背はもちろん僕よりは低いが、女子の中では高い部類に入るであろうことは間違いない。

 そして、

「ところで染谷さん、用件は…?」

少し歩いた所で、僕はそう切り出す。

 「そうそう、単刀直入に言うね!

 和男くん、あなた、闇属性を持っているの?」

「えっ…!?」

その時、僕が口にできたのはその一言だけで、あとは驚きになって、次の言葉が出てこない。

 「ごめんね、余計なこと言っちゃって。

 でも、そうなんでしょ?」

僕はその時、完全に固まってしまった。

 「それでね、話っていうのは…、

 実は私、『光属性』を持っているんだ。」

「ヒカリ…ゾクセイ?」

次の彼女の一言で、どうにか僕は復活した。

 「そう、光属性。

 確か、闇属性の方は、仲良くなった人を不幸にする、そんな属性だったと思うけど…。」

「…うん。そうだね。」

彼女は続ける。

 「光属性はその逆。仲良くなった人、周りの人を幸せにする、そんな属性なんだ。」

「は、はあ…。」

僕は驚きのあまり、そんなため息に似た声しか出せない。

 「それでね和男くん、私のこと、どう思う?」

 「ど、どうって…。」

「正直に言って!

 ねえ、かわいい?かわいくない?」

彼女はおどけたポーズで、僕にそう問いかける。 

 『正直、彼女は僕のタイプとは違うような…。』

 僕は心の中で一瞬そう思ったが、

 『そんなこと、僕が言う資格のあることではない。』

瞬時にそう思い直した。

 「…タイプじゃない、のかな…?」

「え、いや、そんなことは…。」

「そう、じゃあ決まりだね!」

「えっ、何が…?」

「ここで私から、ある提案があります!」

「提案…?」

「私たち、今日から付き合わない?」

「付き合う…ええっ!?」

 数秒のラグの後に、僕は大きな声を出してしまった。

 一応言っておくが、僕は今まで異性とお付き合いをしたことは1度もない。

 そんな僕が、こんなに人気のある染谷さんと付き合うことになるなんて…。

 いやいやまだ付き合ってるわけではない。染谷さんは…ただ気が迷ってるだけかもしれない。あるいは、ふざけて僕で遊んでいるのか。

 「で、でも…、」

「あ、一応言っておくけど、私は本気だよ?あと、私は光属性を持ってるから、不幸にはならないからね。だから…、

 私があなたを幸せにしてあげる!」

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