第67話 隠し鉱山

 ホークネストの鉱山への道は途中で岩に道を塞がれていた。

 俺は近くに降り立ち迷彩スキルを使い見張り込んだ。

 食料を積んだ馬車が通りかかると岩の壁が左右に割れていった。

 なるほど土魔法かなんかで入り口を塞いでいたのか。

 俺は馬車の後をついて行って洞窟に入った。


 洞窟は坑道になっていて変形スキルかなんかで壁が固められている。

 そして天井には魔道具の灯りが灯っていた。

 よくみると簡易魔道具も混じっている。

 俺の作った物が犯罪に使われるとなんとなく気分が悪い。


 進んで行くと大きな坑道が枝分かれしている場所に出た。

 そこには小屋があり見張りが何人かいる。

 おれはこっそり小屋に入り坑道の地図を手に入れた。




 奴隷のいる場所はだいぶ先だな。

 途中蝙蝠の魔獣が出現したが魔法で瞬殺した。

 坑道にも魔獣が出没するのか。

 魔獣は問題ないが魔法を使っている所を見られると侵入がばれる。

 慎重にいこう。


 金属を岩に打ち付ける甲高い金属音がする。

 俺は音のする方に坑道の分かれ道を曲がった。

 しばらく進むとそこにはたがねをもってハンマーを盛んに振る奴隷達の姿があった。


 むっ、地面の下の方から振動が。

 ここ崩れるのか。


 監督官が真っ先に逃げ出す。


「ロックワームだ。奴隷ども逃げるんだ。死にやがったら承知しないぞ」


 奴隷達が慌てて逃げ出す。

 俺は吸着のスキルで天井に張り付き、逃げてくる監督官と奴隷達をやり過ごした。

 坑道の地面がぱっくり割れ、坑道の太さと変わらないような大きさのミミズの魔獣が顔を出した。

 見ると腰を抜かして歩けなくなっている奴隷が一人。

 俺は死魔法を発動してロックワームを殺した。




「はへっ。勝手に死んだ。寿命だっのかな」

「いや、寿命じゃないぞ。俺が殺した」

「誰っ!?」


 俺は仮面を被り姿を現した。


「助けに来た。違法奴隷から開放してやる」

「本当?」


 子供だと思ったら大人だった。

 ドワーフだろう。

 彼は、よく見たら彼女だった。

 彼女は首をかしげる


 俺は自然の魔力に偽装した魔力ゴーレムで契約魔法を潰した。


「名前を言ってみろ」

「奴隷番号6502です」

「本当の名前だよ」

「ロレットよ。やった契約魔法が解けた」

「頼みがある。奴隷のふりして違法奴隷を一人づつ俺の所に連れてきて欲しい」

「分かった。開放してくれるんだね」


「ああ。ところでこの鉱山からは何が出るんだ」

「魔鉄、たまにミスリル。でもって稀にオリハルコン。そして、一万回に一回ぐらい青い水晶」


 魔力結晶はここからの産出品だったのか。


「ロックワームは頻繁に出るのか」

「ええ、私が来てから毎日。そう言っても一週間ぐらいしか経ってないけど。あいつら、奴隷を一人食うと満足して引っ込むんだ。毎日坑道のどこかで犠牲者が二十人は出るのよ」


 そうか、一人ずつ奴隷を助ける予定だったが、それだと全員解放する前にロックワームの犠牲者が増えるな。

 何か手はないだろうか。


「ロックワームの特徴を教えてくれ」

「私もあんまり知らないけど。とにかく振動を感じると出てくるみたい。それと体重が重い人から狙われると古参の奴隷が言っていたわ」


 なるほど、足の振動の大きさで獲物を選別しているのか。


「そうか」

「それから、魔法は効かない。剣もほとんど効かない。とにかく坑道では無敵ね」


 魔法防御を持っていてその他に防御系のスキルを持っているみたいだな。

 でも俺には関係ない。

 死魔法は魔法防御をすり抜ける。


「ありがと、参考になった」




 なんとなく方策は立った。

 倒したロックワームをアイテム鞄に回収してロックワーム退治をする事に。


 ストーンゴーレムを囮に俺は天井を進む。

 迷彩スキルを使っているので俺の姿は見えない。

 すれ違う奴隷がポカンとした顔でゴーレムに道を譲る。


「勝手にゴーレムを出したのどの奴隷だ。鞭で打ってやる。命令だ名乗り出ろ」


 当然誰も名乗り出ない。


「新種の魔獣なんじゃないですか。やっつけるぞ」


 監督官達が武器を抜いて打ちかかってくるがゴーレムは痛覚がない。

 所々かけたりひびが入るが、そのつど俺はスキルを使い修復した。

 そして、反撃にスタンガン魔法つきのパンチをみまう。

 掛かってきた監督官は全員を叩きのめした。


 坑道に振動が来る。

 俺は死魔法の準備に取り掛かった。

 出てきたロックワームを死魔法で瞬殺して、ゴーレムに食わせる動作をさせる。

 そして、屍骸を回収。




「おい、ロックワームが消えたぞ。ゴーレムもどきが食っちまった」


 その後は、誰もゴーレムに掛かって来る者はいない。

 半日かけてロックワームの駆除を行った。


「おい、ロックワームを全て食べたら、今度は俺達の番じゃねえか」

「よせよ、俺にはあいつが涎をたらしている幻想が見えたぜ」


 ゴーレムを衆人が見守るなか変形スキルで地面に穴を空けそこに沈むように消えさせた。


「おい、消えちまったぞ」

「ロックワームイーターの野郎は明日も来るのかな」

「いまいましい、ロックワームが消えてくれるのなら万々歳だ」

「俺には救いの神だ。監督官にもロックワームの被害はあったからな」


 ゴーレムはロックワームイーターという名前になったらしい。

 そこらかしこで囁く声が聞こえた。


 そして、夜になり俺はロレットの手引きで奴隷を一人ずつ解放していく。

 その際に変形で作った石のメイスを持たせた。

 明日の朝が楽しみだ。


 朝になり、起床のドラの音と共に元奴隷が一斉にほう起した。

 そこら中で戦闘の音がする。

 入り口を偽装していた魔法使いが来たので、スタンガン魔法で眠らせた。

 その他にも腕が立ちそうな奴をみつけてはスタンガン魔法で援護。

 元奴隷達の圧勝で事は終わった。




 俺は治癒魔法で怪我人を治し、大急ぎで王都まで戻った。

 ランデ男爵に連絡を取るとホクホク顔で現れて言う。


「手紙を貰って飛んできました。隠し鉱山が見つかったんですか」

「そうだ、魔獣が巣くっていたんで退治しておいた。生き残りがまだいるかも知れない」

「そちらはそのうち退治の依頼をあなたに出すと思います。後は任せて下さい。元奴隷の要望も出来るだけ叶えます」

「そうしてくれ。貸し一つだ。今回の俺の取り分はいらない。その分、奴隷に支度金を渡してくれ」

「ええ、ええ、分かっていますよ。今日はなんていい日なんだ」


 かなり浮かれているが大丈夫なのかな。

 手柄はランデ男爵が持って行ったが構わないだろう。

 俺の仕業だと分かると貴族派がうるさそうだ。

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