◆その567 闇の集会2
デューク・スイカ・ウォーカーの姿をしたミケラルドが部屋に入ると、その視界にはまず【魔人】が目に入った。円卓の中央奥に座るエレノアの隣には、魔人と【シギュン】。シギュンの隣には【クイン】、【ナガレ】、【サブロウ】、【ノエル】。一つ空席があり、【カンザス】と【ホネスティ】がいた。そのホネスティの隣には黒いローブを羽織った背の低い人間がいた。骨格から男とわかるものの、ミケラルドには彼がひどく痩せてみえた。
(こいつが
メディックと魔人の間にはまた一つの空席があった。
ミケラルドがエレノアに目をやると、彼女はそちらへ誘うように手をやった。
(円卓とはいえ、魔人と近い位置に座らせるなんて……変な出世をしたかもしれないな……)
「揃いましたね、それでは始めましょう」
言うと、エレノアはまず【ナガレ】に目を向けた。
「ナガレ殿、報告を」
「【
その報告を聞き、カンザスが肩を
「やはり子供はアテになりませんねぇ」
続きホネスティが。
「ただの子供でないから始末が悪い」
隣に座るメディックが気味の悪い笑みを浮かべる。
「ヒヒヒ……だが必ず始末する。それが今回の招集の最大の目的だろう?」
すんと鼻息を吐いたサブロウが言う。
「
「相変わらず細かい爺だ。やりようはいくらでもある」
「どの口が言うとるんじゃ、お前も爺じゃろうに」
そんなやり取りにナガレが口を挟む。
「どっちもどっちだね」
両者がピクリと反応するも、小さく手を挙げ止めたのはエレノアだった。
「パーシバルの処罰は必ず行います。けれど今ではありません。シギュン殿、報告を」
「魔族の協力により神聖騎士オルグの派閥はなくなったと言っても過言ではありません。それよりも気がかりはアルゴス騎士団長です。クイン」
シギュンに言われ立ち上がるクイン。
「はっ! アルゴス騎士団長がオルグ派閥の聖騎士団員の綿密な調査を行っていたと部下から報告を受けました。どうやら魔族とこちらの動きを法王が気付いたようです」
「いえ」
「は?」
シギュンの否定の言葉に首を傾げるクイン。
「法王の背後にはミケラルド・オード・ミナジリがいると思われます」
「「っ!?」」
皆一様に驚き、デュークは違った意味で驚いていた。
(あれー? 何でバレたんだろう)
そんなミケラルドと似たような疑問を持ったエレノアがシギュンに聞く。
「そう判断した根拠は?」
「木龍グランドホルツがやって来た日、ミケラルドがライゼン学校長の休みに際し臨時講師を買って出たそうです。同日、法王とアーダインの密会をこちらで確認しています」
「そこにミケラルドがやって来た可能性があると?」
「木龍グランドホルツはディノ大森林にいた。そのディノ大森林にはパーシバルが調査に行っていたはず」
シギュンがそう説明すると、エレノアが言った。
「そういう事でしたか。ディノ大森林でミケラルドがパーシバルを懐柔、そして木龍と手を結んだ。ミケラルドであれば木龍を法王国へ誘導する事も簡単だという事ですね」
頷くシギュン。
「たとえオルグ派壊滅の調査に関わっていなくとも、法王クルスとミケラルドが密会、密談の機会を多く設けているのは間違いないかと」
少し考え込んだ様子のエレノアが次に見たのはホネスティだった。
「ホネスティ殿、報告を」
「リプトゥア国とミナジリ共和国との戦争時使われ、我々の計略を利用するかのように使われたギルド通信と似て非なる魔法。調査の結果、冒険者ギルドと商人ギルドにも出回っているようです。ギルドは製作者を明かしていませんが、これを発明したのはおそらくミケラルド・オード・ミナジリでしょう。とすれば、シギュン殿が仰るように密談を頻繁に行えるかと。まぁ、そもそも奴は吸血鬼。【テレパシー】が使えるので、強引に法王に連絡を入れる手段は最初から持ち合わせている。とはいえ、両者から連絡をとれる可能性があると見ておく事は間違いではないでしょうね」
これを聞き、ミケラルドが感心する。
(やっぱ優秀だよな、こいつら。仮説とはいえ、小さな情報から答えにたどり着いてる。そうか、ホネスティは金集め以外にギルドを調べていたのか……)
すると、エレノアがノエルを見る。
「ノエル殿はいかがでしょう?」
「剣神イヅナと剣鬼オベイルは日に日に力を増しています。こちらの観測距離に気を遣う程です。炎龍ロードディザスターの成長も凄まじく、数か月もすれば
「気にする事はありません。オリハルコンズが警護にあたる事もある中でノエル殿はよくやっていると思います。では――」
次の報告者の名を呼ぶ瞬間、ノエルがエレノアの言葉を遮った。
「――もう一つご報告が」
「……何か?」
「ここへ来る前の事です。イヅナは冒険者ギルドへ行きました」
「冒険者が冒険者ギルドへ行く事に何か問題が?」
「いえ、問題は冒険者ギルドで公布された内容です」
「というと?」
「ミケラルド・オード・ミナジリが、冒険者ギルドから
そこはミケラルドにとって、少々むず痒い現場なのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます