その371 ガーディアンズ
「こいつぁ驚いた……」
思わずそう零してしまった俺を誰が責められよう。
「ナタリー!」
「メアリィ!」
何の合図かと思ったら、
「「ツインシャイン!」」
光魔法【シャイン】は強力なフラッシュだ。
ハーフエルフのナタリーと、エルフのお姫様のメアリィが決めた【ツインシャイン】。目が眩むどころではない。ピッタリ息が合い、その効果は倍以上。
現代でいうフラッシュグレネードレベルじゃなかろうか。
モンスターが皆を見失うと共に我も失う。目を覆い機と見た前衛はこれだけで大助かりだ。
二人の合体魔法か。仲の良い二人ならではの相乗効果だな。
「どうだ、ミック?」
「いや、凄いのなんのって。やっぱりリィたんと一緒に特訓してたの?」
「うむ、ナタリーとメアリィは
ふふんと胸を張るリィたんはいつも通り可愛い。毎朝、神に感謝しよう。
「バランスの良いパーティだよね、ガーディアンズ」
「だろう?」
得意気に微笑むリィたんはとても可愛い。龍神として奉ろう。
だがしかし、本当に良いな、このパーティ。
脳筋の剣聖レミリアをクレアが援護し、脳筋の勇者エメリーがナタリーとメアリィを守り、隙を衝いた援護魔法。そして、脳筋のリィたんが
リィたんが本気を出さずとも、しっかり攻略出来るように動いている。
ナタリーの魔法発動技術も早いし的確だ。
メアリィも一戦ごとに自分の動きを微調整してる。
二人共将来が楽しみである。
内政も出来て可愛くて強いとか最強では?
「勇剣、轟雷!」
「聖剣、
勇者エメリーと剣聖レミリア。あの二人ならゴブリンチャンピオンも目じゃないな。
仲も良く息も合う。互いの剣の癖を知ってるからか、舞うように敵を裂く。
うーむ、かつての勇者レックスと剣神イヅナもこんな関係だったのだろうか。
そんな四人を華麗にサポートするのがクレアだ。
以前、シェルフで指摘した風魔法【ファストエアロ】の切れ味が格段に上昇し、牽制以上の攻撃が出来ている。
ダブルヘッドセンチピードの外殻は硬いから致命傷には至らなかったが。ゴブリンチャンピオンにはしっかりとダウンをとれる一撃を放ってる。
弓とダガーを適宜使い、パーティの縁の下をしっかりと支えているようだ。
リィたん? リィたんは最高だ。明日リィたんの彫像を造ろう。ミケラルド商店で売ろう。聖女アリス人形より売れるかもしれない。
さて、問題は三階層である。
マスターゴブリンの襲来には、リィたんも大きく動かざるを得ないだろう。
右を向けばマスターゴブリン。左を向いてもマスターゴブリン。いつも心にマスターゴブリン。嫌気が刺す程のマスターゴブリン無法地帯。
さぁ、どうやって
「……嘘ぉ?」
「ふふん、ミックは知らなかったでしょう? ゴブリンってね、すっごく目が悪いの。人間やエルフみたいな他種族は警戒するんだけど、こうして【歪曲の変化】でゴブリンの姿になっちゃえば……」
本日のドヤ顔ナタリーは、そうしても仕方ないアイディアを俺に示してきた。
そうか、【歪曲の変化】って使える存在自体希少だから、攻略法として埋もれていたのか。完全に三階層フリーパス状態である。
「何も倒すだけがダンジョン攻略じゃないという事だな。ナタリーの奇抜さには私も頭が下がる」
と、龍神様までもナタリーを称賛した。
……俺こそ脳筋だったという訳か。後でダンジョンに籠ってマスターゴブリンに慰めてもらおう。きっと脳の筋肉体操に付き合ってくれるはずだ。
「ありがとう、ナタリー。さぁ、次は私たちの出番だね!」
「えぇ、四階層のムシュフシュの尻尾の毒蛇は厄介なので、いつでも解毒出来るよう待機していてください」
言葉通り、正にエメリーとレミリアの出番だった。
ムシュフシュが出て来る四階層にはゴブリンチャンピオンも出現する。
だが、二人程腕が立てば、ゴブリンチャンピオンは木偶の坊同然。ほんの少しかき乱してやれば、自重と武器の重さに振り回され、簡単に倒れてしまう。
とはいえ、それもレミリアとエメリーの鋭敏な動きがあればこそだ。
「そんな攻撃、ミケラルドさんのが怖かったです!」
勇者が何か叫びながらムシュフシュを倒してる。
誰だろう、ミケラルドって。きっと血も涙もないヤツに違いない。
とまぁ、リィたんが力を抑えてもランクAパーティ以上の働きをしているこの「ガーディアンズ」は、現状聖騎士学校入学選抜の第一候補である。
うちの身内はすげぇな、と思いつつ一階層から四階層のオールスターが出現する五階層へと降りた。
ここでは他種族もいるため、【歪曲の変化】による素通りが出来ない。
「まじか……」
と思っていた時期が俺にもありました。
「そうそう、ミックのあの顔が見たかったんだよね、メアリィ?」
「はい! 見事大成功です!」
ハーフエルフとエルフの二人が織りなす【歪曲の変化】無双。
これを敵に仕掛けるとはおそれいった。
全てのモンスターを人間に偽装させ、上手く同士討ちを誘発させた。
体表の色を少し変えればこちらが間違える事もない。だが、向こうからしてはどれも同じに見える事だろう。
これにより第四階層よりも早く第五階層を突破してしまったのだ。
ガーディアンズ……優秀過ぎるのでは?
「さて、次は第六階層だけど……?」
「勿論行くよね!」
「うんっ!」
ナタリーの言葉と共にメアリィがニコリと頷き、
「メアリィ様が行くのであればどこまでも」
クレアがそれに続き、
「【エルデッドウィザード】か、楽しみだね」
エメリーが続き、
「問題ありません、行きましょう」
レミリアが先陣を切り、
「どうだミック、楽しそうだろう?」
「うん、とても冒険してるね」
「ふふふ、何たって私たちは冒険者だからな!」
いやぁ、冒険者ってのはこうでなくちゃ。
その日俺は、審査官を始めてから初の六階層へと潜ったのだった。
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