その231 激闘
「ほう、その歳で超回復まで使えるとは驚きだな」
「ダークヒールを使えば……元通りです」
「ふふふふ、顔はそう言っていないが?」
確かにその通りだ。
体内に負ったダメージは回復出来ても、今だ鈍痛が残っている感じだ。
更には【恐怖耐性】でもカバーしようがないこの震え。
圧倒的強者との対峙。この恐怖はいつ以来だろうか。
そうだ、おそらくあの時だ。まだリィたんが仲間になってなかった時、水龍リバイアタンと対峙した時。
あの時切り抜けたトンチはもう使えない。
何故なら相手はスパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエル。
俺が憎くて憎くてたまらないあのスパニッシュなのだから。
こればかりは命懸け。ジェイルとリィたんが手を出すことはない。
何故ならこいつは俺が超えるべき相手。超えなければいけない相手だからだ。
その話をした時、ジェイルは黙って、リィたんは笑って応えてくれた。
だから俺は、俺の我儘に応じてくれた彼らに、応えなくてはいけないんだ。
「今度は、気を失うだけではすまないかもしれないな」
「【外装強化】」
「まだ特殊能力を残していたか」
「【外装超強化】」
「がしかし気になる」
「【脚腕同調】」
「この短期間でどうやってそれ程の能力を身につけた?」
「【突進力】」
「っ! いや、それは【特殊能力】ではないな! 【固有能力】!?」
「……【超突進力】!」
「ちぃ! トールトルネイド!」
雷を纏った巨大な竜巻に飛び込んだ俺は、
「竜剣、竜巻!」
「馬鹿な!? 何故雷が効かぬ!?」
雷魔法【リチャージ】により、雷系の魔法を受ければ、それは全て俺の魔力へと変換される。
「おぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「くっ! 更なる力を残していただと!?」
それを
「ぐっ!? 何だ!? 腕が!? こ、これは聖なる力!?」
「馬鹿な、それは勇者の剣!? しかしそれは今……! いやそうではない!」
「そう、何故私がこれを扱えるか。問題はそこですよね……はっ!」
「くっ! 【ダークブースター】!」
「……【ダークブースター】!」
「何故貴様が【ダークブースター】を!?」
【
「このっ!」
また風雷の双手! だが、こちらも間もなく解析が終わる。
「【風雷剣】!」
雷の渦を纏う俺の
「こ、小癪なっ!」
遂に拮抗を見せた互いの一撃に、スパニッシュが焦りを見せる。
「ならばこれはどうだ!」
俺の周囲に闇色の球体が放出される。
スパニッシュは一度ニヤリと笑うと、その球体へ向かって飛び込んだのだ。
悪寒――最初に感じたのはソレだった。【危険察知】が反応し、背筋を凍らせる。
瞬間、俺は戦場から姿を消したのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
「何やってるの、ミック?」
「あ~~~……死ぬかと思った」
「もしかして……また死んじゃうような事してたの?」
「いや、そんな事ないよ……
「そう、ならいいんだけど、
「いや……咄嗟に
「あ、ちょっとミック! ちょ――――」
――――魔族四天王の攻撃をかわすんだ。国を跨いでかわしても別に問題ないだろう。
戦場から逃げたのではない。これは戦略的回避である。
そう自分に言い聞かせながら、俺はリィたんが首から下げていた
「随分と大層な回避行動だったなミック」
「一歩間違ってたら首が飛んでたよ」
「奴の【ゾーン】は厄介だ。注意しろ」
「うん、一回で何となくだけど魔法の効果はわかったから」
「ならばいい。ふん!」
言いながらリィたんは、ハルバードを振るいスパニッシュへの道を切り開いた。
苛立つスパニッシュが俺を捉えると、俺たちは再び駆けた。
「貴様! 一体何をした!?」
「ただの回避行動ですよ。もしかして見えませんでした?」
「嘗めた口を!」
再び飛ばされる【ゾーン】。
これは闇魔法か。【ゾーン】の中に身を投じる事で他の【ゾーン】から出現する、簡略瞬間転移という感じの魔法だろう。種がわかればこちらも対処出来る。
必要なのは【嗅覚】、【超嗅覚】、【超視覚】、【超感覚】、そして【散眼】。魔力の揺らぎを鼻で、目で、肌で感じろ。そこに奴が……スパニッシュがいる。
「……っ! そこだ!」
「なっ!?」
両腕で俺の一撃を受け、後方へ飛ばされるスパニッシュが睨む。
だが、次の瞬間俺はスパニッシュに追い付いていた。
「これは【瞬歩】か!?」
「ぬん!」
【怪力】を発動して振り下ろした一撃が、スパニッシュの身体を大地に埋める。
直後、大地から飛び出たスパニッシュが、風魔法【エアスライス】を放って俺を牽制した。
俺は近くのドッグウォーリアの死体を持ち上げ、それを防ぐ。
「はぁはぁはぁ……貴様……一体どれだけの能力を身につけた……っ!?」
「さぁ? まだまだ増える予定があるので、全部身に付けてからもう一度聞いてください」
「どこまでも嘗め腐った奴だ! っ! 何をしている!?」
俺はスパニッシュによって切り刻まれたドッグウォーリアの死体から、一滴のソレを指先に付けた。
そう、俺は新たなる
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