第10話 文章力があがる方法(前編)

 文章力があがると小説を書くのが楽しくなる。


 これは間違いありません。

 小説を書くに当たって、文章力があるに越したことはないし、どんどん文章は上手になった方がいい。


 とは言っても、

 文章力は上がるのか?

 どうすれば文章力が上がるのか?


 考えますよね。


 単純かつ確実な方法があります。

 でも、難しい方法が。


 それは人にこと、そして人のということです。


 自分の文章を人に読んでもらうというのは、意外と難しい。そもそも読んでもらえないからこのエッセイを読んでくれている人も多いのではないですか? そういう意味ではカクヨムに上げたところで、読んでもらえるとは限らないのです。


 さらに、文章にダメ出しをもらうとなるともっと難しい。カクヨムではなかなか読んでもらえない上に、コメントをもらえることはまれです。それが文章に関するダメ出しとなるとほとんどないといっていい。あったとしても、とても効率が悪く意味がないといっていいでしょう。


 ということは、電脳空間ネットではなく、現実リアルで読んでもらうというのが一番ということです。


 






 私が小説を書きはじめたのは、高校生のときです。そのいきさつは第3話で触れました。

 その後、大学を出て就職するまで書いていたのですが、その間、ほとんど他人に見せたことはありませんでしたね。自分の趣味が恥ずかしかったし、今のようなネット環境があるわけでもなかったし。


 それで書くのはやめてしまったのですが、三年半前に、私生活でも仕事でもしんどいことが重なり、精神的に参ってしまいました。


「このしんどさをなにかの形で吐き出さないと、おれはおかしくなってしまう」


 そしてふたたび小説を書きはじめました。およそ20年ぶりのことです。


 書き始めると「おや」と感じはじめました。意外に書けるのです。いや、むしろ学生の時に書いていた頃より、上手に書ける。私は楽しくなってきました。


 長い間書いてこなかった自分が、なんで昔より上手に書けるんだろう?


 心当たりがひとつだけありました。


 それは仕事で文章を書き続けてきたと言うことです。







 私は国家権力の末端に連なる木っ端役人なのですが、役所には、業務にかかる指示・命令は文書により行うという建前があります。書面に明らかにして、後日「言った、言わない」と揉めないようにするためですね。


 公務員の作る文書「通達」はお役所仕事の典型です。型通りで融通が利かず、前例踏襲がはばを効かせています。


 あるとき私に、この「通達」を改正するという仕事が回ってきました。私も長い間勤めてきて役人根性に染まっています、前例を踏襲し、型通りの通達に仕上げて上司に提出しました。



 すると――ダメ出しをされたのです。

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