第3話 始まりは塔の中から 3
夕方、夕食を運んで来てくれたお母さん(仮)に質問を。
「あの…何故私はこの部屋から出れないのですか?」
その言葉に、お母さんは少し焦った様に言葉を返しくる。
「ど、どうしてそう思ったの?」
「…外のお庭に行ってみたいと思ったので」
これは予め考えておいた返答だが、母(仮)よ目が泳ぎまっくてるよ…。
やましい事ありますって言ってるようなものだよ…。
たぶん、今までこの体の持ち主は外に出たいとは思わずに生活して来たと思う。
出られない事に何の疑問も持たなかったのだろう。
「その…貴方は特別なの。だから外に出ると危険がいっぱいあって、だからこの部屋に居なくちゃならないのよ!」
「…そうですか」
……出ました!この回答テンプレじゃん。
それに、何が特別で、どう危険なのか聞いても、これ以上の返答は期待出来ない。
食事が終わり、いつもなら(熱があるこの二日程の事だが)お湯で体を拭いてもらっていたのだが、今日は違った。
連れられて移動したのは隣の部屋。
そこは、トイレとバスタブがある所だ。
お風呂に入れるのかな?ときょろきょろ辺りを見回すとある事に気が付いた。
お風呂に蛇口がない!
トイレは水洗だったから、水が引いてあったと思ってたのだが…。
困惑している私の横で私の横で、お母さん(仮)はバスタブに向かって手を翳し何事か呟く。
すると、手の平から水が出て来た!
あっという間にバスタブは水で満たされました。
えーー!?ナニコレ?
びっくりしてると次は炎が現れ、炎は手からバスタブの水の上でくるくる回る。
私がフリーズしている間も炎は何回かくるくる水の上を回ると、目の前で消えた。
「さて、お風呂に入りましょう」
笑顔で話しかけてくるお母さんには、こくこくと頷くことしか出来なかった…。
恐る恐るバスタブに入ると温かいお湯だ。
しかも丁度いい適温。
大人しくされるがままになって居るといつの間にか、湯あみは終わっていた。
浴槽から上がって、ゴシゴシ頭を拭かれていたのだが、急に体を温かい風が包む。
再び、びっくり。
唖然としながらも質問。
「今のは…?それにさっきの炎はなんですか?」
焦って聞く私に向かって、ちょっと考えたお母さんは答えた。
「さっきの?…あぁ、水を出してお湯にしたこと?」
「はい。そうです」
その言葉にお母さん(仮)…もう(仮)は抜いて、不思議そうに答えてくれた。
「いつもやっていたでしょ?魔法よ」
にっこり笑って言われたが、頷くことしか出来ない…。
いや~魔法かぁ。
そうだよね、転生テンプレだよね!
なんて考えてると私をベットに寝かせお母さんは、部屋から出ていく。
ちゃんと鍵も掛けて。
一人になったので、今日の一日を整理する事にした。
まず、一つ目。
私は此処に軟禁されている。
二つ目。
ここはタイムスリップした昔ではない。
…この二つで既に積んでる。
取り敢えず百歩譲って、軟禁されているのは良しとしよう。
いや、本当は良くないんだけどね。
問題は二つ目だ。
お母さんは魔法だと言った。
今まで、生きてきた中で魔法なんて見たことが無い。
と言う事は、私はタイムスリップしたのではない。
やっぱり転生したのだ。
答えを出していたのに、無視し続けたてたのに…。
転生。
それは生まれ変わること。
私は、一回死んでこの子に生まれ変わった事になる。
そう言えば、前世の最後の記憶と言うと…。
確か、入社二年目にもなり、毎日残業をしてた。
誰もしたくてする残業なんてないんだよ!
しかも残業理由が、先輩の仕事をやらされてだなんて…。
毎日、朝出勤してから夜は終電。
どんな社畜だよ。
ブラック企業すぎだろ!
家には寝に帰る様なものだったけど、私の唯一のお城だった。
ただし、ご飯を作る余裕は無かったので、基本はコンビニ。
その日も帰り道のコンビニに寄ったんだけど、買い物してコンビニを出た所で酔っ払いに絡まれた…。
で、逃げるように青信号が点滅する横断歩道を渡ってる途中で車に轢かれたんだったー。
交通事故死。
てか、コンビニ前で絡んできた酔っ払いも原因だよね?
それにしても今の私には元々のこの子の記憶がない。
その代わりに、前世の私の記憶がある。
多分何か理由があるとは思うのだが…。
それにしても神様よ、前世で一生懸命に頑張って来たのに転生したら軟禁生活ってどうかと思う。
これはもう
「あーお先真っ暗」
ですな。
それから半年の月日が流れましたが、特にこれと言った収穫もなく日々を過ごしております。
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