第17話

「魔族か」

「王を殺した!?」


騎士団長たちは全員戦闘体勢に入る


「……魔族に王が殺されたとなれば私たちが王追放を企んだ事は国民に気づかれないけどそれを魔族がする必要はない筈……じゃろ?クロル・ルシフェル」

「はい? 王追放を企んでいたのですね。それは申し訳ございません……それを知らずに私が殺してしまいました。ですが手伝いと考え貰って許して頂けますか?」


クロルは頭を下げて謝罪する

その対応に若干動揺するがすぐに冷静になる


「許すけど戦争の続きかのぉ。骨が折れる」

「いえいえ、軍事国家と手を組んだ貴女方と戦争は致しません。貴女の思惑通り撤退させて頂きたいと思います。では皆々様御機嫌よう」

「水魔法 水流の槍」

「土魔法 砂上牢」


立ち去ろうとするクロルに騎士団長の2人が魔法で攻撃を仕掛ける

砂の塊がクロルを拘束して水の槍がクロル目掛けて飛翔する

クロルはその場から動かない


「馬鹿者が! 闇魔法 ブラックウォール」


魔力で作った壁を二重に出して反撃に備える

暴風が吹いて辺りを吹き飛ばす

壁で暴風を抑え全員を守るが暴風が吹き終えた後、壁は壊れ崩れる


……なんじゃ、風魔法か


クロルが平然と立っていた


「今のは?」

「……許してもらえるかのぉ?」

「どうしましょうか? 流石に攻撃されて無罪とはなりませんよね? 風魔法 神霊の息吹」

「闇魔法 ブラックウォール、ブラックシールド」


二つの魔法を使い攻撃を防ごうとするが破られ壁まで吹き飛ばされる

団長たちも吹き飛ばされ壁にぶつかる

叩きつけられた衝撃で内部にダメージが入る

内部にダメージが入ったからか口から血が出る


「ぐっ、は……」


力無く倒れ治癒を待つ


「貴女以外は戦闘不能ですね。貴女が誠意を見せてくれると考えて治癒し終わるまで待ちますよ」


……誠意? この状況でどうしろと


クロルは王を退かして椅子に腰掛ける

たった一撃でこの国の戦力の大半が壊滅した

リア、ヴァーミリオンを除けば現状最高戦力の集まりだったのだが魔法で防御を張った状態で一撃、そのままの勢いで食らえば全員死んでいただろう

先ほどの攻撃で2人が気付きしばらくすればこちらに来るだろう

クロルを捕らえるならそれまでここで凌ぐ必要がある


「凌げると思っているのですか? 貴女が吸血鬼であろうと私には勝てませんよ」

「……これが第3席……上はもっと強い?」


回復した喉の調子を確かめるたまに声を出して話しかける


「さぁ、どうでしょう。私は位に興味はありませんので、高位魔族として選ばれただけですから」

「そう、何故王を殺したの?」


気になっていた王殺しについて聞く


「そうですね。戦争においてまずは指揮官を殺すと言うのは効果的なので、でも指揮官は別に居ましたね」

「誠意ってのは?」


続けて彼女が言う誠意について聞く

物によっては出来る出来ないがはっきりとする


「……私に貴女の所有権をくだされば私は喜んで戦争を辞めます。出来ないなら今すぐにでも戦争を起こしてこの国を滅ぼします」

「私は物じゃ無いのじゃが……何故運命の選択を迫られているのじゃ?」


……これだと逃げられないし下手に動けば殺されかねない。死なないと言っても勝てないんじゃ無理じゃし選択一つじゃな


「条件付き、まだ動けないからこっちきて」


まだ回復し終えていないためクロルを呼び耳元で条件を話す


「どうじゃ?」

「それを満たせば貴女は私の物になるのですか?」

「無論、これは契約じゃ。魔法は無いのかのぉ?」


契約して条件を必ず守らせようと考える


「ありますよ。様々なものが……全部言うのはかなり長くなりますが」

「そうじゃな、破棄できるのは私だけで契約は絶対である事」

「いいですよ」


クロルが契約の詠唱を始める

数分に渡り続いた詠唱は終わり私たちの手には契約の証拠となる指輪が付いていた


「契約完了です。おや、招かれざる客が来たようです」

「面倒ごとは嫌いだから後は頼んだよ」


クロルが距離を取ると同時に立ち上がり闇魔法を放つ

クロルは風魔法で攻撃を防ぎ強力な一撃で私を廊下まで吹き飛ばす

先程来た仕事志望者の避難を終えて駆けつけていたヴァーミリオンとリアが気付きヴァーミリオンが私の元に駆け寄りリアが剣を抜きクロルと対峙する


「久しぶりだね」

「えぇ、お久しぶりです。相変わらず手荒い挨拶ですね。英雄さん」

「クロル・ルシフェルなんて名前だったんだね。知らなかったよ」

「自己紹介をしておりませんでしたからね」


面識があるようで2人は軽く会話をして戦闘に入る


「大丈夫か」

「大丈夫……ただ他の団長達が一撃でやられた。相手はクロル・ルシフェルじゃよ」

「今回の戦争を起こした張本人か。それでは俺だと勝てないな。彼女に任せるしかない」


壁に寄りかかり王の間を見ると激しい戦闘が繰り広げられていた

一撃で相当の威力を持つクロルの一撃をリアは物ともせず反撃を食らわせるがクロルも同様に攻撃を物ともせずに戦う

元々私は援護に入る気は無いがもしその気が有っても援護しようにも出来ないだろう

現にヴァーミリオンが入れていないで私の側で戦いを見守っている

力が及ばずただ見守っていることしか出来ないヴァーミリオンは悔しそうに見える


「馬鹿な考えは起こさない方が良いぞ? 水使いの団長と砂使いの団長が攻撃を仕掛けたけど2人の攻撃は効かなかった」

「なっ、ウィルドとザーガの攻撃がか?」

「砂の方は拘束魔法じゃったがな」


……ウィルドとザーガは名前の方かな? ヴァーミリオンの名前も知らない……そういえば団長たちの名前って誰も知らないな


しばらく戦闘が続きリアに疲れが見え始めた頃クロルはため息をつく


「お遊びはここまでです。本日の目的はとっくに達成しましたので帰らせていただきます。またすぐに会うことになるでしょう。その時はよろしくお願いします」


クロルが礼儀正しく一礼すると風が吹き姿が見えなくなる

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