第55話 フリースクール7

サナとナユは時間ピッタリに来た。今日はお母さん二人はすぐに帰った。俺は二人に磯崎さんを紹介し、今日の予定を立てさせた。午前中は勉強、十一時から調理、午後からはナユはパソコンで小説、サナは身体を動かしたいと言ったので、倉庫から自転車を引っ張り出してきて、全体を水洗いした。いつ買ったのかわからないが、昔からあるマウンテンバイクだ。サナには少し大きいかもしれない。サドルを一番下まで下げて、陽光に当てておいた。




サナは、二階に三部屋ある洋室の一つでデスクに向かっており、ナユは和室で正座をしながら問題集を進めている。俺がチラリと覗きに行ったら、急いで何かを隠した。おそらく小説を書いていたんだと思う。別に咎めるつもりもないが、可愛いな、と思った。




「神谷さん、お姉ちゃんのこと好きなんですか?」




十一時になり、二人ともキッチンに来たが、サナはいきなりそう聞いてきた。俺は、サナの姉のユウナと付き合っていた。しかし、一週間ともたずに別れた。原因は俺がユウナに時間を割かなかったからだ。




「なんでそんなこと知りたいの?」




俺がそう聞くと、二人は顔を見合わせて笑った。箸が転がっても可笑しい年頃と言うが、二人がこうして安心して笑えるのは、この場所があるからかもしれない。逆に、この場所がなければ、二人はどういう思いで毎日を過ごしていたのだろうか。




ナユに関してはここに来て良かったと思っているが、サナは不登校になってからまだ日が浅い。ここに来ることで、かえって学校から遠ざかる結果になっているのかもしれない。サナの家族、つまりユウナの家族も、俺に気を遣って言えないのかもしれない。そこはしっかりとした見極めが必要だ。サナまたは家族から、なんらかのサインが出たら、それを見落としてはいけない。サナは再び学校に行けるはずだ。




昼食の時間ギリギリに、スープパスタとサラダができた。磯崎さんを呼び、四人でテーブルを囲んだ。




「実は、私の孫も中学生なんです。」




磯崎さんの孫は愛知にいるが、ここ数年は会っていないらしい。意外な話が聞けた。サナとナユは磯崎さんには気を許したのか、色々と質問したり、盛り上がった。その流れで、午後からサナは、磯崎さんとバドミントンをすることになった。磯崎さんは、定年間際になってから、仲間の誘いで少しやっていたらしく、自信ありげな顔をした。




「めっちゃ久しぶり!」




サナはここに来て一番はしゃいだ。それで、午後からは俺とナユが家にいて、磯崎さんとサナは近所の体育館へと出かけていった。ナユに、どこでやりたいか聞くと、リビングがいいと言ったので、俺はリビングを開けた。自室に引きこもり、何かあれば呼ぶように言った。ナユはソファーに座り、ローテーブルにノートパソコンを置いて、前屈みのような格好で入力を始めた。












ヒロコからラインが来たのは午後一だった。女装した木下くんと二人で写った画像が送られてきた。すでに事務所内にいるものと思われた。というのも、二人が、ちょっと見ないような赤い椅子に座っており、カジュアルなスペースにいるものと推測できるからだ。案の定ヒロコから、「潜入完了」というメッセージが来た。木下くんは、ブラウンのホットパンツに、長袖のシースルーのブラウスを着ていた。前回よりも、格段に露出が増えていた。木下くんも、もしかして生きづらさを感じていたのか。そう思えるほど、写真の木下くんは生き生きとしていた。




次の画像では、綺麗な女性と一緒に三人で写った画像が送られてきた。俺は、まさか、と思ったが、その女性も男ということだった。顔立ちに不自然さは全くなく、体型を見ても本当に女性だとしか思えなかった。ヒロコたちは、潜入したというよりも、遊びに行っておもてなしを受けているような感じだった。俺は、「金に関連しそうなことを探ってくれ」とだけ返信して、別の作業に入った。




館山陽だまり中学校のロゴや看板のデザインを、決めてしまおうと考えていたのだ。アイスコーヒーを飲みながら、大量のカタログに目を通した。シンプルなものが良いと思い、白地に青い文字で横書きの、書道のような書体のものに決めた。俺はすぐに業者に対して直接電話をして、サンプルを送ってもらうことにした。業者は、かなり丁寧に対応してくれた。




次に、俺は中原さんに電話をした。由利先生の旦那の行方を掴めそうか聞きたかったのと、LGBT団体に対して、全事業所に通達のようなものを出してもらうためだ。




「坊っちゃん、昨夜の男性ですが、偽名のようです。同じ年齢で早稲田大学卒の前川達也という男はいますが、電力会社に勤務しています。勤続十五年だそうです。この男の名前を使ったと考えられます。」




「やっぱり偽名ですか。」




「名前からはそこまでしかわかりません。例のプライムライフという会社から辿ってみます。こちらは同業ですので、なにかと情報もありますので。」




「わかるんですか?」




「期待されて結構です。」




一先ず安心だった。そしてLGBTの団体のことも伝えると、すぐに対応してくれることになった。




「中原さん、今夜また中村社長が来るんですけど、中原さんも来れますか?」




「申し訳ございません。私は訴訟の対応がございますので。ですが、社長も心は決まっているようです。マンションということで前向きに考えている様子です。」




「そうですか。良かった。でも、訴訟って、あのテレビ会社ですか?」




「テレビ会社と、田中理事長、両方です。テレビ会社には、インサイダー取引の件を追及させてもらいます。」




「勝算はあるんですか?」




「完全なデマと印象操作ですから。他の大手マスコミも、介入のしようがないでしょう。報道の自由とは別の、悪意ある報道ですからな。」




少し不安な気もしたが、こういうふうにこちらから攻めないと、向こうの連中のやりたい放題になってしまう。それは絶対に嫌だった。




「わかりました。お願いします。」












電話を切った俺は、途端に暇になってしまった。ヒロコからの連絡待ち、中村社長待ち、ロゴ待ち、おまけに由利先生の旦那の情報も待ちだ。




仕方なく、俺は携帯で、昨夜に引き続きLGBT関連のサイトを検索した。適当なページを開き、そこに書いてあるテキストを適当に読んだ。




『トピックがセンシティブになりやすいため、LGBTとセクシャルマイノリティの違いはしっかりと理解すべきです。』




なぜ、この人たちは、日本語を使わないのだろう。LGBTとセクシャルマイノリティは、名詞だから仕方ないにしても、トピックとセンシティブはどうか。『話題』と『慎重さ』だろう。今の日本語では、話題と慎重さは英語で表現するほうが正しいのだろうか。それとも英語話者が書いているから、こういうことになるのか。おそらく、どちらも違う。




多数ある言葉の中から一つを選択するのは、より正確に伝えるためであると同時に、センスの問題でもある。俺は語学を専攻しているからよく分かる。「ラッキー」と「幸運」と、どちらを使うかは、より意味が伝わりやすいほうを使うということと同じくらい、普段遣い慣れているほうや、しっくり来るほうを選択するはずだ。センシティブを選択する人は、それを遣い慣れているか、もしくは、英語で表現しないと正確な意味が伝わらないからそうしているのだと思う。つまり、この文の発想は、丸ごと外国から輸入されたものであると断言できる。




LGBTとは、日本語でそれを表す言葉はない。そこに、性的少数者とは違うと言われても、今の日本人には到底理解されないだろう。だが、理解はされないが、日本人には必ず受け入れられる。というよりも、既に受け入れられているのではないか。なぜなら日本人は性癖にオープンであるし、そもそも寛容な民族だからだ。文学作品を見ても、そうした例は随所に出てくる。




それに、俺は、日本人は見栄っ張りだと思っている。外人にいい顔をしようとする癖がある。もちろん、それは俺にもある。だから外人に問題提起されたものを、受け入れないはずがないのだ。




そんなことを考えながら、ページを読み進めたが、ポリアモリー(複数の愛を肯定し、一人に限定されない愛)という単語が出たときに、若干のときめきを覚えた。












そうしているうちに、ヒロコから、今度は電話がかかってきた。




「すっごく楽しかった!色んな人がいたし、私、目覚めちゃったかもしれない。」




ヒロコは、すごい勢いで話し出した。




「電話してから行ったんだけど、代表の美和さんっていう人が、最初から最後まで私たちについてくれたの。不安もなかったし、手持ち無沙汰になることもなかったな。何も知らないで美和さんと会っていたら、美和さんのこと、好きになっちゃうかもしれない!」




「そうなんだ。どんな話をしてたの?」




「なんでもないこととか、私と木下くんのこととか。でも私、この人には嘘つけないなって思って、木下くんとは恋人じゃないって言っちゃった。それはわかってくれた。そしたら、好きな人いるでしょって言われて。なんでわかったんですか?って聞いたらね、本当に好きな人がいる人は余裕があるんだって。私、余裕があるって思われたみたい。」




「そっか。」




ちょっと、この話に付き合うのはしんどいな、と思ったが、なるべく機嫌を損ねないように話を聞いた。




「何かわかったことあった?」




「大丈夫だよ。ちゃんと話すから。うーんと、飲み物を五百円で販売してたよ。どんなものでも全部五百円。利用者の人も結構頼んでた。あれは、カンパみたいなものなんじゃないかな。あと、グッズも売っていたよ。一応私も記念に買ってきたから、あとで写真送るね。」




「何を買ったの?」




「バッジとミサンガと本。高くてビックリしちゃった。」




「いくらだったの?」




「ふふ。一樹くん、美和さんと全然違う。質問ばっかり。」




「ああ、ごめん。」




「いいの。私は一樹くんのほうが好き。やっぱりああいう人たちって、必要以上に共感するのがうまかったり、相手を嫌な気持ちにさせないような話し方だったり、そういうのは上手なんだけどね。なんか不自然なんだよね。ちょっと話す分には楽しいかもしれないけど、ずっと一緒にいるんだったら気が狂っちゃうかもしれない。私は喧嘩するくらいがちょうどいいと思うの。」




「そっか。それで、いくらだった?」




「もう!一樹くん、ちょっとは共感してよ!」












ヒロコと話しているうちに、サナと磯崎さんは帰って来ていた。ヒロコの言ったことをまとめると、飲み物が五百円、バッジは五百円、ミサンガが千円、本は三千円くらいから、ということだった。それとは別に、手作りと思われるパンフレットがあった。手作りな割には、かなり手の込んでいる内容で、その画像も送ってくれた。




全ての情報をまとめた結果、代表の人、美和さんというらしいが、彼女とはもしかしたら話が通じるかもしれないと、俺は思った。美和さんは、話をきちんと聞いてくれるらしく、こちらの要求も理解はしてくれるだろう。人口の増え続ける松戸市の現状もわかっているはずだ。そして、何より、彼女らはお金に困っていることだろう。ここが一番大事だ。最初からお金でゴリ押ししては、もちろんいけない。誠意をもって、対話をする意外に正解はないという気がした。俺が直接行くこと、そして神谷建設営業部長の高瀬クラスの、営業慣れしている人間が必要だと思った。その辺も、中村社長と詰めることができれば、意外と話はスムーズに進むかもしれない。とにかく、中村社長の出方次第だ。




リビングに行くと、ナユがサナにパソコンの画面を見せていた。




「ナユ、小説できたの?」




俺が画面を覗き込むと、二人はキャンディリングの動画を見ていた。




「神谷さん、サナたち見に行きましたよね!」




「懐かしいね。横浜まで行ったね。ちょっと遅れそうになって走ったんだよな。」




「今、ナユに見せていたんです。」




サナは目をキラキラさせながらそう言った。ナユは興味なさそうな顔にも見えたが、「めっちゃいいです」と、ぼそりと言った。




「次のライブも行けるように頼んでおこうか。いつになるかわからないけど、いい?」




「行きたいです!」




サナだけじゃなく、ナユも頷いたので、俺は綾子に頼んでライブの手配をしてもらうことにした。




「綾子さん、キャンディリングのチケット、四枚お願いしたいんですけど、いいですか?」




「わかりました。次のライブ、来月ですね。席とっておきます。」




「ありがとうございます。」




「それと、松戸の件を父に話したのですが、マンションの建設は簡単には受け入れられないようです。あそこまで堂々と宣言したものを撤回する勇気がないんだと思います。頭ではマンションのほうが利があることはわかっているんです。」




中原さんは、中村社長はマンション建設に傾いていると言っていたが、綾子が言っていることとは若干のズレがあった。俺はそれを、そのまま綾子に伝えると、綾子はこう言った。




「もしかしたら、娘の私には、方針を変えると言えないのかもしれません。会長、今日は会長と父と二人きりのほうが良いかもしれません。」




確かに、娘に弱味を見せ難いということならわかる。




「わかりました。正直なところ綾子さんにはいてほしいです。でもしょうがないですね。わかりました。」




すみません、と言って、綾子は電話を切った。俺はサナとナユに向かって、笑顔を作った。




「チケット、取れたよ!」




するとサナはなぜか暗い顔をした。




「綾子さんって、この前の人ですよね?」




「この前、ここにいた人だよ。俺の会社のナンバーツー。キャンディリングの担当をしてもらってる。」




「神谷さん、その人のこと好きなんですか?」




「え?なんで?」




俺は内心を見透かされたような気がして、驚いたが、平静を装って対応した。するとサナは諦めたのか、




「なんでもないです。」




と言って動画を閉じた。




その日はそれで終わったが、最後のサナの顔がどうしても心に引っ掛かった。それでも、お母さんが迎えに来る頃には、サナはすっかり元通りになって、磯崎さんとバドミントンの話で盛り上がっていた。俺が笑顔で見送ると、サナも笑顔で手を振った。考えすぎかと思いそのまま見送った。












その日の夜、綾子の父親、神谷ハウジングの中村社長が一人で館山を訪ねた。俺も磯崎さんを帰し、一人で対応した。時刻は二十時、蒸し暑い夜だった。俺は、一番高級感がある祖父母の部屋に通した。夕方、綾子に用意してもらったお茶と茶菓子を出して、フェンディカーサのローテーブルに並べ、カーテンを開けて夜光を取り込んだ。中村は、物怖じせずに部屋に入り、ソファーに腰を下ろした。




「会長、先日はどうも。」




「こちらこそ、色々と知り合いができて楽しかったです。おじさん、単刀直入にいきましょう。」




俺は社長のことをおじさんと呼んでいた。それは、中村が昔からの顔馴染みで、うちの実家にもよく出入りしていたからだ。




「わかりました。」




「先日のお話ですが、僕は商業施設ではなく、マンションがいいと思うんです。今、全国のデパートというデパートは、ほとんど倒産しています。そして勝ち残っているのは郊外のショッピングモール、これは車で来るのが前提の施設です。松戸駅前に商業施設を作ったとして、わざわざ松戸まで人が来るのか、そして松戸市民はわざわざ駅前まで来るのか、そういった点を考慮してもリスクが大きいと思います。」




中村は、目を細めながら俺の話を聞いた。




「デパートはまだ良かったと思うんです。地域に根差した、地域のシンボルでした。ショッピングモールやアウトレットは、結局地域ではなく、大企業、とりわけ外資が利益を上げる仕組みになっていますよね。従業員の雇用も非正規が多いと聞きます。郊外まで車で行きますが、その車を売るのも大企業、ガソリンを売るのも大企業、地域には何も還元されません。」




「それは仕方のないことです。そういう流れに逆らっても、あっという間に飲み込まれてしまいます。」




中村は、あくまで冷静に、静かに語った。俺は、それが彼のやり方だと見抜いた。余裕を見せるということだ。昼間、ヒロコが、本当に好きな人がいる人には、余裕があると言っていた。今の中村には、余裕があるように見えた。しかし、俺は人に余裕を見せるのは嫌いだ。人には全力を見せた方がいい。そういう人間の魅力は、計り知れないと思う。大介さん、中畑くん、美紗、岡本、彼らはその一瞬を全力で生きている。だから美しいのだ。




「僕が言いたいのは、うちが利益を上げるのであれば、別の方法もあるということです。それがマンション、複合マンションです。これだと、あの辺り一帯の商業施設と競合しません。また、やりようによっては、十分松戸の顔になることは可能だと思います。」




「おっしゃりたいことはわかります。ですが、例えば地下に巨大駐車場を作るとか、魅力あるコンテンツを取り入れていけば良いかと思います。客寄せとしての商業施設こそ、松戸には相応しいのではないでしょうか。東京オリンピックを経て、松戸は生まれ変わるのです。その中心に我々はいましょう。」




魅力的な話だが、無理のある内容だった。到底受け入れられない。魅力あるコンテンツなど、安さ以外にあるだろうか。今はデフレなのだ。だが、そういうことをいくら言っても、無駄な気がしてきた。というよりも、これ以上中村の考えを否定してはいけない気がしたのだ。綾子が言ったことを思い出した。




「頭ではマンションに利があることをわかっている。」




俺は、パターンを変えることにした。




「おじさん、うちは千葉の雄だと思っています。今まで、そういう地域に根差した仕事をしてきた実績があります。おじさんたちの世代がそれをやってきました。それは感謝しています。でもその次の世代、僕らの世代はデフレ世代です。しかもこのデフレはずっと続きます。消費の冷え込みも二度と上方しません。うちはこの世代に対しても責任を負わなければならないと思うんです。彼らに必要なのは、住居です。」




中村は無言でお茶を啜った。




「僕が考えているのは、一階と地下を使って、商店街と飲み屋街を作ることです。駅から続く一つの街のようにして、ここに足を運んでもらうんです。二階より上はマンション。ですが、アパートもいいと思います。下層部は広い一部屋よりも、コンパクトなワンルームをたくさん、上層部は高級志向の部屋というふうに分けるんです。これだと利回りもいいんじゃないですか。」




「確かに、コンパクトルームは時代の求めに合っているでしょう。デフレ世代ですか。確かにその通りですね。中原さんや綾子に、マンションを勧められました。おそらく会長の意向なんだと思っていましたが、それほど決意が固いとは思っていませんでした。」




中村の言い分が変わった。




「複合マンションは、思い切って三階部分までをテナントにいたしましょう。久々の大仕事ですから、やるならば徹底的にやりましょう。コンパクトルームも取り入れます。」




中村に笑顔が戻った。二日前、リビングでワイングラスを掲げた、あの怖いもの知らずの中村の顔だ。こうなれば一安心だった。




そこで俺はもう一つの懸念を伝えた。




「おじさん、綾子さんから聞いていると思いますが、例の団体の交渉ですが、僕に任せてもらえますか?」




「ああ、LGBTの団体ですね。私が参りましょう。必ず成功させて見せます。これは私の十八番ですから。」




(ああ、これは俺がでしゃばらない方がいい。任せよう。マンションを譲ってもらえたのだから、こっちは譲ろう。中村の手柄にして、中村の顔を立てよう。)




「わかりました。そっちはお願いします。助かります。」




俺たちはその後すぐに解散した。お互いに思うところがあったからだ。だが、中村は今回、若輩者の俺の言葉に耳を貸してくれた。それ以上は望んではいけないだろう。祖父母の部屋の電気を消して、風呂に入り、ベッドの中で、再びLGBTについて調べた。ニューハーフの異様な魅力に、俺は虜になっていた。

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