「そうなんだ。君はすごいね」と古代魚は言った。褒めてもらったことは素直に嬉しかったのだけど、小唄は古代魚の言っている言葉の意味をよく理解することができなかった。

「あそこを見てごらん」と古代魚は言った。古代魚の見上げる先にあるものは彗星だった。「白色の彗星だね」と小唄は言った。「彗星をもっとよく見てごらん」と古代魚は言った。小唄は古代魚に言われた通りに、二つの目を凝らして彗星をじっと注意深く観察してみた。すると彗星の周りに、なにやら黒く小さな、たくさんの得体の知れないものたちが集まっていることに気がついた。

「あれはなに?」と小唄は言った。「魚たちさ」と古代魚は答えた。

 魚たちはいくつかの無数の個体が集まった群れをなして、空に浮かぶ彗星と一緒に暗い闇の中を飛ぶようにして移動していた。それはまるで本当の海の中を泳ぐ一匹の大きな魚に無数の小さな魚たちがまとわりついて、ある一つの集団として泳いでいるような光景だった。小唄は昔、水族館の中で見た、そんな魚たちの姿を頭の中に思い浮かべていた。

「君も、あの中に行っちゃうの?」と小唄は言った。「そうだよ」と古代魚は言った。小唄はそんな古代魚の言葉を聞いて、心が悲しくなった。なぜなら小唄はもう古代魚のことを自分の友達だと勝手に思い込んでいたからだ。

 小唄が喋らなくなると、古代魚も喋らなくなった。だからしばらくの間、小唄たちは無言になった。

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