3
ちろちろと小川の流れる音はまだ小唄の耳に聞こえていた。小唄は「古代魚」と小さな声で呟いた。すると「なんだい?」と古代魚の声が聞こえた。小唄は古代魚の声を聞いて内心、すごくほっとした。
ぽちゃん、と魚の跳ねる音がした。見ると遠くの闇の中にうっすらと波紋のようなものが広がっている場所があった。「ほら、こっちに来て。なにも知らない君がこの場所で闇雲に歩き回っていると、きっと迷子になってしまうよ」と古代魚は言った。小唄はその言葉になにも答えないまま、波紋のある場所まで歩いて行った。するとそこには古代魚がいた。
「さっきはごめん」と小唄は言った。すると古代魚は「なんのこと?」と小唄の答えをはぐらかした。小唄はまたちょっとむっとした。古代魚の声が明らかに笑いを含んでいたからだ。でも小唄は冷静に、冷静にと自分に言い聞かせて「さっきのこと。怒ってごめん」と古代魚に言った。古代魚は小唄に「別にいいよ」と笑みを含んだ優しい声で言った。
「さあ、とりあえず立ち話もなんだからこの場所から移動しようか?」と古代魚は言った。「移動するってどこに?」と小唄は言った。「あそこだよ」と古代魚は言った。古代魚は器用に水面から顔だけを出して、そこから遠くの空を見つめていた。
小唄が古代魚の視線を追って遠くの空を見上げると、そこには巨大な白い、一つの彗星が空の中を飛んでいた。
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