1/20 あけおめことよろ

 人生で姫と呼ばれたかった時がある。

 ヴァンガードや鉄拳とかやってるグループで女子がいると姫と言われていて、プレミもカスとか言われない優しい世界がそこに広がっていた。俺は疲れていた。操作デッキでプレミって鼻で笑われる世界に疲れ切っていた。笑った相手を脳筋デッキでボコる世界に疲れ、突然マジでアニメかよって野戦プレイを申し出てくるクソに疲れていた。そして、イキッた結果だった。

 しかしリアルでは無理があるので、ネトゲーってかアプリゲーで姫になることにした。


 俺は大塩平八子。俺はこのゲームで乱を起こすぜ!!


 だが、姫と言っても一言で何をしていいかわからねぇ。姫扱いを指を咥えて見ていたはいたが、過程はわからなかった。

 取り敢えず、リアル姫を目指す事にした。

 気品あふれ、心優しい、皆を導く良き王族の姫であろうとした。

 この大塩平八子、皆が慕い愛される姫になるぜ!!!

 その為にはある程度の強さが必要になる。対プレイヤー戦もあるゲーム。負け続けでは王族としての面目が立たん。しかし、課金した所で始まったばかりのゲームなので環境の変化に後手に回る可能性は否定できない。

 ここはいっちょ、手持ちで一度編成を考える必要があるな。

 俺は考えた。会議中も考えまくった。パワーデッキはどうしてもレア枠が必要となる。無ければどうしても劣化版になる。が、恐ろしい事にレアはいなかった。※嘘と思うやろ?マジで配布以外なかった。

 そこで俺が考え出したのは、完全受ゲー。コモンとアンコと配布レアで組んだ、当たったら一番めんどくさくて嫌なことをトコトンやるコンボを繋げるチームだった。カードゲームで言うと軽い無限ループを起こしてタイムアップでこちらの総合hpが高いから勝てる感じ。

 これは結構強かった。順位が二桁に食い込むレベルでよかった。

 名前覚えたからなと言われが、お前社会の教科書読んでたか?って話である。

 次に俺は挨拶を徹底した。礼儀正しく、誰にも平等に。これは王族しての基本やろう。

 聞かれたことは何でも答えた。別にレシピとかどうでもいいし。環境なんてアプデで変わるし。その都度考えてるし。同じギルメンなら強くなってほしいし。惜しむものなどこの姫には何もない!

 タッグ戦も人がいなくて困ってる人と毎回組んでた。

 ある日、副団長に抜擢された。

 俺はこの時、確信を得たね。俺は、今、上り詰めている!!

 姫の階段に!!!

 日に日に、姫っぽくね? と、期待感が募る。

 俺は今、気品溢れ、心優しく、誰にでも平等に与えて、そして導く立場に立ったのだ。

 いつ姫と呼ばれてもおかしくない。

 大塩平八子姫。

 中々悪くない名前じゃないか。


 そして、ついにその日がやってきたのだ!!


「大塩さんって……」


 くるのか!? くるのか!?

 姫っぽいってくるのか!?


「心優しい巨人って感じですよね!」

「わかる。大きな岩とかそっと退けてくれそうだよね!」



 ふー。

 人生って上手くいかねぇなぁ!!!




 と、昔の携帯に入ってたアプリを見て思い出した。心優しい巨人の悲しい昔話でした。



 なんでや!!!!!!!!!

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