10/30 あたたかみ

 この前、バイトかよって量の天ぷらを一人黙々と家で揚げていたんですが……。

 滅茶苦茶苦痛でした。

 マジで時給が何一つ発生していないと言うのにこの作業。

 マジでクソ。

 貰ってしまった痛む手前の野菜を多分十三人前ぐらいは二時間近くひたすら揚げていたので、揚げたて美味しい! ちょっとした贅沢! ビールに合う! とかなく、冷めてる。冷めてる。美味しいけど、疲れたしこれから片付けを考えると最早絶望でビールを飲む気力すら湧かねぇ。

 ひたすらエリンギ天とピーマン天を食いながら思ったんですが、ほら、グルメ漫画あるやないですか。

 そう、料理でバトルやつ。

 もしさ、あれに出てさ、こんな思いをしながら揚げ物揚げてさ、今度は俺の番や!! 特製エリンギとピーマンしか入ってない天丼、食うてや!! とか、言いながら出すわけですよ。

 でさ、味の王とかにさ、食われて一応美味い美味い大袈裟に言われるんだけどさ、やっぱり、主人公に負けてさ。

 な、なんで……。なんでワイが負けたんや……。とか、聞くとさ。


「富升、お前の天丼は確かに美味かった。しかし、一つだけ足りないものがあった」


 とか言われてさ。


「足りへんもの……? それは一体、何なんや!!」


 とか、ノリノリで言ったらさ。


「それは……、あたたか味だよ」


 とか言われてさ。


「へへ、成る程な。ワイの料理にはあたたか味が足りへんかった」


 て、言いながら服を脱いで、俺はこう叫ぶね。


「そんなあたたかくなりたいなら、この部屋全部炎で埋め尽くしたるさかいなっ!!」


 腹に巻いたダイナマイトに火をつけて味の王に抱きつくね! 俺は!!

 マジでこんな大変な思いして作った物に、あたたかみ足りないって言ったら爆破余裕でしょ。

 俺は、迷いなくしますよ。

 あたたかくしてやろうじゃねぇか!!

 なので、皆んな!

 ご飯作ってくれる人に何か足りないとか言うのやめような! まず、優しい心を足そうな! 出した後、食うか食わないかを、決めよ! そうしよ!

 明らかに命の危機のある味出してくる奴いるけど、ダイナマイト腹に巻いて抱きついてきたら嫌やろ?

 トミーとの約束だぞ!


 てか、料理でバトルすんなよ。まず、そこやろ。料理を何だと思ってんだ。

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