第3話 死と主観

死ぬとはどういうことだろう

心拍、脳波、細胞の活動、思考の停止

その後は?



地球上における循環

すべてはいずれ土に返り、その土は新たな芽を育む

水は雨となり海に混じり、上空へ登り雲となる

なら存在は?

思考は?意思は?私は?

どこへ行くのだろうと、思う



地球という星のもつ特異性の意味

今も広がり続けるという宇宙

その中にポツリと浮かぶ青い星

恒星からの距離、周囲の星の直径、絶妙な引力関係

まるであつらえたかのような状態

二つと無い、環境、条件下



私という知覚

近視、乱視、色盲、緑内障、白内障

視覚ですら、同一ではありえない

同じものを見ているのに現れる個人差

育った環境は人格に影響を与える

赤い画用紙その中に、反対色の青を見出す人が居ても それは驚くに値しない

五感を通して思い、考え、感じているこの個が私だ

それなら、私は、私以外の存在なしには存在しえない




人生

私の思うところによれば

人生は、幅30㎝程度の屹立した道だ

四方八方見渡しても果てなど気配すら欠片にも見えず

ただ、前と後ろに道は続き

幾千幾万にもなる分岐は

その中のひとつしか選ぶことができない

ごくたまに近くを別の道がしばらく平行して並び

まれに別の個と、共に同一方向へ進む事もある

あるいは、立ち止まって道に腰掛け

ずっと下を覗き込み

ふっとそのまま落下してみたい衝動にも駆られる

本当に果てはあるのだろうかと

道の先を作るのは過去の時間



世界

私の知覚できる範囲では世界は美しい

空は遠く、緑は瑞々しく、炎は熱く、雪は冷たく、夕日は切なく

生き物は動き、動かなくなった生き物は、また、かえる


言葉が足りないがゆえに、かつて起こったという悲劇は

繰り返されて、繰り返されて

何度も何度も



すべてはフラスコの中でのことならば、ひとつのサンプルとして生きてやろう

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