情景

@tokeizara

第1話 理由

昇降口を出て正面は西の方角

夕方、夕日、夕焼け

すべては赤い光に染められて

影だけが黒

太陽は飴の様に赤く溶けて、真っ黒な山の端にかかる

何も言えずに、座り込み

眺めるうちに刻々と時間は過ぎて

すべては暗闇に沈む

勿体無くて、多分それが始まり


ファインダーで四角く切り取り

薄いフィルムに写しこみ

一筋の光も差し込まない真っ暗な部屋

リールにまきつけ

現像、停止、定着液

取り出して、乾燥

光を通して、紙に焼付け

出来上がるのは、ただの


何度も何度も繰り返し

けれど、同じものは一度としてなく


空の赤、夕闇の黒、虚空の青

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