一騎討ちまでの過ごし方(8)
首の皮を切り裂いて冷たい金属が体に潜り込む感覚。
頸動脈が切断され、首の骨が綺麗に斬られ、喉を刃が通過する。
そうして反対側の首の肉と皮を切り裂き、刀が私を通り過ぎて行った。
滑るように滑らかな斬れ味。
ゼリーに刃物を入れた様に、抵抗なく、刃が吸い込まれていった。
首の骨を砕かず、切断した。
こんな刃を見られたのは光栄だ。賢者様の一刀で葬られたのは光栄だろう。
しかし、一つ心残りは、砦の皆の期待に応えられなかったことだ。
情けない。
一体誰が私の代わりに女王の相手をするのだろうか。
「ねぇ、ちょっと!大丈夫?何死んだ顔してるの?」
賢者様が私の胴体を揺らす。
嗚呼、首が落ちる。
グラグラ
おや?
胴体に乗っているだけの首が落ちない。
「デネブ隊長!大丈夫です。首は胴体と繋がっています。安心して下さい。」
繋がっている?
斬られたのに?
そんな訳………そう言えば斬られたのにこれだけ考えられているな。
恐る恐る首に手を当ててみる。
丁度魔剣が通り過ぎた辺りを触ってみる。が、
「斬れて………いない?」
斬れて血が流れていてもおかしく無い筈である。しかし、手に伝わる感覚には生温い血の感触や首に出来た魔剣の切り傷ではなく、今までと何ら変わらない、胴体と頭を継ぎ目無く繋ぐ首であった。
「一体これは……………」
今起こったのは……賢者様の幻覚?
否、そんな事は無い。
体の中を通過する金属の冷たさ。あれは確かに現実としてあった。
首の皮が抵抗する余地無く体内に刃を入れてしまった感覚、ドクドクと血の流れている頸動脈が斬れる感覚、首の骨が折れずに斬れる感覚。
そんな未知の、しかし、確実にそうだと解る感覚があった。
「いきなり斬るから何かと思ったじゃ無いですか!
タツミンさんは笑えない事を平気でする!」
騎士団長様が賢者様に怒っている。
「ごめんなさい。でも、これが一番この魔剣の能力を知るには手っ取り早いのよ。
実際、理論で説明するより早いでしょ?」
「だからって首を斬ることは無いでしょう?」
矢張りあれは現実だったのだ。「賢者様………今のは一体……何だったのでしょう?」
「不殺魔剣ゴエモン。この剣の能力よ。凄いでしょ?
この剣の鞘や柄に使われている木は生命樹と呼ばれている長命の木で水の無い高温の砂漠や火山の火口のマグマが飛び散りそうな場所や流水が全部凍結して吸った空気で心臓迄もが凍り付くような氷河なんかの過酷な環境で育つことで知られているの。これは他の生物からの大きな影響を受けずに生き残るための知恵なのね。でも、それだけ過酷な環境で生きるのは大変。だからこの木にはどんな傷を受けても瞬時に再生するような生命力が備わっているの。
で、この刀身の方なんだけど、存在そのものが災害になると言われている大陸ガメ、あの甲羅の端から端までが5000m有ると言われている、万年生きているあの亀ね、あれの背中にある山に見える大陸亀の甲羅が変質した鉱物の塊。その塊の中心にある脈動する金属、生命を湛える金属ライフメタルをベースに、他の生物の命を吸うとまで言われ、実際にそれが生えている地域は皆死に絶えた土地になっている
「つまり………?」
「相手を無傷で斬り捨てることが出来る魔剣って事。」
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>読んで下さる皆様へ
いつも読んで頂き有り難う御座います。
単刀直入ですが、もし、良ければ感想やフォロー等のフィードバックを頂いたり、他作もご覧になって下さい。お願いします。
ここが良かった。ここは少しこうした方が良いなどの改善点等が有りましたら是非お教えください。お願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます