Folge 70 美脚準備完了!?

 うるさい。

 いや、それでは申し訳ないか。

 携帯は仕事をしてくれている。

 そう、早起きの手伝いをしてくれているんだ。

 文句を言うなんて失礼極まりない。

 とりあえずアラームを止める。

 もう起きられる感じはするからスヌーズも解除だ。

 やっぱりサンドウィッチな睡眠はよく寝られるな。

 後ろはツィスカが抱きついている。

 いつも通り朝日の似合うカルラを拝もうかな。

 ん?

 華奢なのは変わらないけど、成長したか?

 日々成長する時期ではあるが。


「あの子たち、いつもこんな風にされているの?」


 何言ってんだ? 珍しいな、寝言なんて。

 ああ、でも今日は早起きするんだ。

 ――早起き。

 そうだよ、早起きして旅行だよな。

 起こしに行かないと。

 行かないといけないはずなんだが、あれ?

 妹たちは結局ここへ来たのか。

 うれしいからいいんだけど、準備をしないとな。


「おい、カルラ。起きて準備するぞ」

「はぁ。こんな朝を迎えているなんて」


 んー、カルラ――じゃない!?


「サダメちゃん、忘れちゃっているようですね」

「あはは、そうだった。じゃあ後ろは咲乃なわけだ」

「咲乃はぐっすり寝ていますね。抱き着くと安心するのでしょう」

「そういう寝方をすることも無いだろうし、良かったのかな」

「サダメちゃんが私たちを受け入れてくれたことが、幸せなんです」


 受け入れたというはっきりした実感は無いんだけどな。

 ただもう、この二人の事が心配になっちゃったんだよ。


「細かい事は気にしないことにしたんだ。心配だから近くに居てもらう」

「はい。サダメちゃんの近くに居させてもらえるのなら、何でもしますからね!」

「ほ、程々にね。何かをしてもらいたくてってわけじゃないから」


 おお!?

 ツィスカより強い力で背中が締め付けられた。


「サダメだ~。おはよ~。これは幸せな朝だね」

「そりゃ良かった。幸せな所悪いけどさ、妹の手伝いをしてくれないか?」

「いいよ! すぐに始めるね!」


 調子が狂うとまでは言わないけどさ。

 何か言うと全てその通りに即行動。

 本当に主従関係っぽくてこっちが緊張する。

 二人はササっと分かれて妹たちの部屋へと起こしに行った。


「オレも自分の荷物を集めて、手伝いをするか」


 玄関に自分の荷物を置く。

 すでに美咲と咲乃の荷物が置かれていた。

 そしてタケルのもちゃんと置いてあった。

 案の定、妹の荷物は無い。


「サダメ! 準備完了したよ! 見て見て!」


 目の前に二組の双子が言われなくても出発する恰好になっている。

 まだ朝飯も食べる前なのに、珍しい。

 ただ四人が横並びになっているのは何なんだ?


「何故にその恰好?」

「いいでしょ! 全員脚出しルックだよ!」


 かぁ、何をしている何を!

 妹二人はそんなに短いのがあったのかというミニスカ。

 咲乃がホットパンツ、美咲は妹程ではないがヒラヒラミニスカ。


「お見事。素晴らしいものを見せてもらった。じゃない!」

「ええ? 喜ぶしか無いと思ったのに」


 妹二人は寝ぼけ眼のままで、まだ一言も発していない。

 全て咲乃のが仕込んだことのようだ。


「あのな、行くところは海? 山?」

「山だよ」

「山でこの季節。素足だとどうなる?」

「あ」


 あ、じゃないんだよ――まったく。


「そりゃ嬉しいんだけどさ、すぐに露出度を下げてくれ」

「残念。すぐに着替えるね。でもうれしかったんだ! うふふ」


 ふむ。

 それにしても確かに圧巻の光景だった。

 美脚があんなに並んでいるのは見たことが無い。

 特に華奢な身体でホットパンツ姿の咲乃にはやられた。

 これは――――内緒。

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