160(終) Last Episode あの花畑で月夜と共に笑い合い、大好きであると誓う

 時刻は14時。

 名物の栄生えいせい高原の花畑は僕と月夜が休憩していた所から10分ほど歩けばいくことができる。

 日差しの強い今日はやっぱり暑くなってきた。20度をかなり超えてるんじゃないかな。もうすぐ4月だけどこの暑さはやばい。


「日傘を持ってきたら良かったですね」

「長居はしない方がいいかもしれないね」


 月夜の白い肌が赤くなったら大変だ。もはや月夜だけの体だけじゃないんだ! っと言ってみる。

 僕と月夜は恋人繋ぎをしたまま花畑に到着した。


「おお!」 「わぁ!」


 一面真っ黄色な花畑だ。

 快晴の空の下、僕達がいる所はちょっと高めの場所となっており、見下ろす形で一面の花畑を見ることができる。

 思わず僕はカメラを手に何枚も写真を撮った。この景色は残しておかないといけない。

 確か、菜の花で有名だったよなぁ。本当に一面じゃないか。人の手は入ってるんだろうけど、すごいもんだ。


「太陽さん、行きましょ!」


 月夜もテンションが上がっているようだ。

 花畑の前まで行くと本当に綺麗な景色が奥まで続いている。

 来てよかったな。本当にすごいや。

 まわりに人はいない。さっき団体客とすれ違ったからちょうど谷間の時間なのかもしれない。

 今の内に写真とか撮ろう。


「月夜!」

「は~い」

「撮るよ~」


 無数の菜の花をバックに月夜の写真を何枚も撮っていく。

 美少女に花畑。エモさ倍増じゃないか! 素晴らしい。

 今日の月夜の白のワンピースは非常によく似合っている。背中に胸の同じ色のリボンを巻いているのがチャームポイントかな。

 さっき死ぬほどくすぐって相当に暴れさせたけど変な折り目とかついてなくてよかった。


 そして僕の側に月夜は近づく。


「太陽さんも一緒に撮ろう」


 三脚も持ってきてるからいいかな。

 タイマーをセットして、月夜と一緒に何枚も撮っていく。

 所々で抱きしめたり、2人でポーズを取ったりとなんだかおかしな写真が撮れていく。

 これは帰ってからみんなに見せてもいいかもしれない。


 僕はカメラを三脚から取る。

 その時、大きな風が僕達を揺らした。


「きゃっ!」


 月夜のワンピのスカートがふわりと立ち上がる。僕はすかさず、下に潜り込んでシャッターを切った。


「よし、完璧だ」

「完璧だ、じゃないでしょ! もう、消してくださいよ」


 すでにさっきの騒動で見ているがかわいいピンクの下着が見える。これは永久保存版にしないといけないな。


「風にありがとうだね」

「えっちな風だなぁ。他に誰もいなかったからよかったけど」


 月夜の下着の写真なんて下手をすれば万単位で売れるだろう。

 もちろん売る気はない。月夜の彼氏である僕だけの物だ。他の奴になんか絶対渡さない。例え星矢であってもね。



 ◇◇◇



「どこまで続いているんでしょう。ちょっと行ってきます~」


 月夜は花畑内にある通路を軽く走って奥までいく。

 本当に広いなぁ。何百メートルあるんだろうか。

 ちょっと暑いけど、風も強く気持ちいい。

 月夜の姿が小さくなる。


 初めはこれぐらいの距離だったんだろうな。

 月夜に初めて恋をしたあの1年生の夏。絶対に恋が成就するなんて思っていなかった。

 1年半が過ぎた今、こうやって2人一緒にいる。


 今でも……届くだろうか。


 僕は大きく息を吸った。


「月夜ォーーーーーーーーっ!」


 やっぱり無理かな。さすがに遠すぎる。


「はーーーーーぁい!」


 振り向いて手を振ってくれる。やっぱり届いた。届くんだ。どこに至って想いは届く。

 僕はもう1度大きく息を吸った。


「大好きだぁーーーーーーーっ!」


 視力が1.5あっても月夜の顔がわずかにしか見えないほど遠い距離だ。それでもきっと届くはず。


「私もーーーーーーーっ!」


 月夜の叫ぶ声がして、全力でこちらに向かって走ってきた。

 みるみる月夜の姿は大きくなる。

 栗色の髪をなびかせ、白のワンピースが揺れて、その何よりも美しい顔立ちが僕の目の前へと近づく。

 僕へぶつかる直前で月夜は速度を緩めた。そのまま僕は月夜を抱き留め、赤子のように持ち上げて、ゆっくりと下ろす。


「さみしかったんですか?」


 月夜は優しい顔でゆったりとした言葉で問いかけた。その通りかもしれない。

 月夜が側にいないなんてもう……僕の人生でありえない。

 だから何度もこの言葉を君に捧げたい。


「月夜、大好きだ」


 月夜はニコリと笑ってくれた。

 僕の側でずっと笑っていて欲しいと月夜に告白したあの時のように。


 その笑顔は僕はいつ何時も求めて止まない物だった。


 月夜は一度僕から離れて、再び菜の花の花畑の側に駆け寄る。

 ぱっちりとした二重の瞳と整った顔立ち、肌は輝くように白い

 誰よりも美しく、かわいく、綺麗で、愛しい月夜の口が開く。


 そして同時に大きな風が吹いた。



「太陽さん、大好きです!」


 月夜から初めてキスをされたあの時のような愛しいほど柔らかな笑顔。

 幸せいっぱいに見える本当に優しい笑顔だった。

 変わらぬその笑顔に僕は月夜を心底愛しく思う。




 私ね……太陽さんのこと、好きになったかもしれない。


 あの言葉から全てが始まったように思える、この僕と月夜の物語。


 月夜は僕が好きであってすきじゃない。


 そう思い続けてずっとこれまでやってきた。


 幾多の時を経た今だからこそはっきりと理解したと言える。


 月夜は僕が好きであってすきだった。



 ーFinー


※本編これにて完結です。読了ありがとうございました!

今後については13時10分投稿予定の謝辞・今後更新計画を参照下さい。

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