第272話 知らぬ間の水耕栽培
そろそろ魔力蓄電池が欲しい。
これがあれば記述魔法で色々な作業を自動化できる。
魔石から魔力を得るか近くの人から魔力を供給するかしないと記述魔法は起動し続けられない。
そうなると人がいない間でも自動で動いてくれる装置が作れないのだ。
魔石は本来貴重なものだ。
でも魔獣を牧場で飼えばいずれ魔石も安定供給できるかもしれない。
以前はそう思っていた。
でも魔獣をそうやって飼うと魔力が低下するらしい。
あれは厳しい自然環境だからこそある程度魔力を持つ模様。
その辺の研究が以前あった事をミナミ先輩に聞いた。
つまり魔石は安定供給できない訳だ。
なら人が魔力を蓄電できる魔力蓄電池か、乾電池のような化学反応を利用した魔力電池を作る必要がある。
ただ化学反応で魔力を得る方法なんて想像もつかない。
同様に化学反応で魔力を貯蔵する方法なんてのも思いつかない。
その解決方法を思いついたのは、ミド・リーとの何気ない会話からだった。
「何か魔力を自動的に発生させる装置とか蓄積できる装置とか作れないかな」
俺がそんな事をつぶやいていたのがミド・リーに聞かれたようだ。
「箱の中に魔獣を閉じ込めて餌でも与えておけばいいんじゃない」
「でも飼育した魔獣は魔力が落ちるらしいんだ。それに魔力という形で出すには殺して魔石を取らないと駄目だし。それ以外に魔獣から直接魔力を取り出す方法は今のところ見つかっていない」
「普通に飼育して駄目ならあのミナミ先輩が作った草を食べさせれば? 人に効くんだから魔獣に食べさせても魔力が増えるんじゃない?」
「でも飼育は面倒だよな」
そう言って気付く。
別に魔獣を飼育する必要はないんじゃないだろうか。
あのクレソンもどきも魔力を蓄積するのだから。
なら直接あの草から魔力を取り出したものは作れないか。
下手すればあの錠剤そのもの魔力電池にならないか。
これは調べる価値がありそうだ。
さっと見回したがミナミ先輩は今日はウージナの研究室にはいない模様。
なのでキーンさんに聞いてみる。
「キーンさん。今日はミナミ先輩は?」
「今日はオマーチの研究植物園です。あの魔力蓄積クレソンの栽培の研究をしていると思いますけれど」
おしおし、色々都合がいいぞ。
「あの魔力蓄積クレソンの現物とあとあの増強剤を少し分けて欲しいとお願いしたいんだ。そこまで急がなくてもいいけれど。勿論代金は支払うから」
「あれならここにもあるわよ」
ミド・リーが思ってもみなかった事を言う。
「えっ、何でここにあるんだ」
「種を分けてもらってここでも栽培しているからね。2階の露天風呂のところの窓際で育てているわよ」
そうなのか。
俺は滅多に露天風呂へ行かないし、行っても周りを見るなんてことはしないから気付かなかった。
「でもここで勝手に使っていいのか」
「ここで研究に使う分にはいいって先輩が言っていたから大丈夫よ。それでも足りなければ私に言ってくれれば種を持っているから促成栽培するわ。魔力は少し落ちるけれどね」
それは便利だ。
「ならとりあえず上にある奴を貰っていいか。うまくいけばあれから直接魔力を採取できると思うんだ」
「そう言われれば確かに出来そうね。いいわよ。あと足りなければ言ってね」
よし。
そんな訳でナイフと搬送用の木箱を持って普段は忌避している2階露天風呂へ。
確かに窓際に例の草が生えていた。
水着姿で筋トレしている身体強化組は無視して窓際へ向かい、そして観察。
どうも水耕栽培的な状態で育てているようだ。
風呂の排水を冷却管を通した後、これら植物の根のところに通す仕組み。
簡易浄水装置を兼ねた状態のようだ。
「これってバッサリやっちゃっていいのか」
「大丈夫よ、その植物強いから。根に近い部分だけでも残っていれば2~3日でまた葉や茎が伸びてくるわ」
何と丈夫な植物だ。
よし、とりあえず半分ほどいただこう。
そこそこしっかり茂っているのを根の上5
とりあえず5本ほど頂く。
もし足りなければまた頂こう。
木箱を持って下へ。
「それにしても随分しっかり生えているんだな」
「魔力を蓄えるにもあそこがちょうどいいみたいよ。日が当たるし水温がお風呂使用時とそれ以外で上下して適度なストレスをあの草に与えるしで。
それに見た目にも緑がある方がいい感じでしょ」
確かにそうだな。
それにしても全然気づかなかった。
最近はずっとニ・ホに行っていたしな。
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