第204話 原油採取その2

 どうすれば効率よく原油を運んでくる事が出来るか。

 俺の魔力と移動魔法用魔道具では油田まで往復は厳しい。

 荷物を持ってと考えるとなおさらだ。

 さらに帰りはこの研究室に直接帰る事が出来ない。

 重い原油入りの缶を持って橋の下あたりから帰ってくる必要がある。


 重い缶の持ち運びは身体強化魔法を使えば何とかなるだろう。

 現地で原油を採取するときに使う工作系魔法は工作系魔法用の携帯用魔道具を持っていけばいい。

 1回で運べる量が少ないのは回数でカバー。

 でもそうなるとやっぱりネックになるのが移動魔法に使う魔力だ。

 片道なら何とかなるが往復だとやっぱり誰かの手を借りないと無理。

 でも毎回誰かに付き添って貰うのも申し訳ないよな。

 ん、待てよ。

 行きは何とかなるかもしれないぞ。


 魔法銅オリハルコンを取り出して移動魔法用の大型魔法アンテナを作る。

 似た作業はもう何度もやったから楽勝だ。

 出来た魔法アンテナは材質も安いしサイズも普通。

 フールイ先輩用のものほど強力ではない。

 それでも構えてみると俺でもオマーチは余裕で見える。

 持ち運び出来る魔道具よりは強力だ。

 これで誰かの移動魔法で俺だけを油田まで送って貰うのだ。

 帰りは自力で帰ってくる事が出来るから問題無い。


 よし、それでは持ち運び用の缶を作るとしよう。

 取りあえずはこの前のと同じサイズでいいか。

 でもついでだから2個用意しておこう

 あと持ち運びに楽なように下に車輪を装着。

 スーツケースのようにゴロゴロ運べるようにする。

 他に原油採取用のパイプとバルブも製作。

 これを取り付ければ1回毎に工作魔法を使う必要もないだろう。

 あとは現地でパイプをもう少し深い部分まで刺してやりたい。

 そうすればガスより液化成分をより多く採取できるだろうから。

 待てよ、それならパイプをある程度伸縮できるように作っておくか。

 そうすれば鑑定魔法で見ながらより適切な深さをその時々で選べるだろう。


 そんなこんなでちょっと怪しい油田櫓のようなもの一式を作ってしまった。

 一応ある程度小型に作ったつもりだ。

 でも身体強化魔法を使わないと動かせない重さになってしまった。

 仕方無い。

 万能魔法杖と移動魔道具を兼ねたウエストポーチを肩にひっかけ、普通の杖サイズの工作系魔法杖(工作系魔法が使えない人用)を持つ。

 身体強化魔法を起動して、それから研究室内を見て適当な人を探す。

 本当は一番俺が頼みやすいのはシンハ君。

 でも彼は今トレーニング中だ。

 次点はミド・リー。

 奴は魔力もあるし自分の魔法はあまりここでは使わないしちょうどいいかな。


「ミド・リー。済まないけれど移動魔法で俺と荷物を油田まで送ってくれないか。帰りは自分で帰ってくるから送り出しだけでいい。一応大型魔法杖を作ってあるからあれでやれば楽だと思う」

「うーん。いいけれど私は場所を知らないよ」

 あっ、そう言えばそうだ。

 場所を知っているのはヨーコ先輩とフールイ先輩。

 それに前回行ったシモンさんだけだ。


「私がやる」

 フールイ先輩がそう言って俺の方を見た。

「いいんですか。忙しそうですけれど」

「私は場所知っている。この杖なら魔力をのせやすい」

 確かに。

 超強力空間系魔法杖だしな。

「これくらいは手伝わせてくれ」

「すみません。ではお願いします。ちょっと荷物を持ってきます」

 油田櫓セットと原油缶を持ってくる。

「杖の前1腕位のところで待って。方向はあっている」

 つまり油田の方を見て何か作業をしていた訳か。

 セットとともに指定された場所で待つ。

「見えた。準備いいか?」

 忘れ物はないよな。

「お願いします」

 そう行った直後、毎度おなじみの浮遊感を感じた。

 すぐに油田の木道の上に到着する。

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