第181話 ソーセージ作成

 買い物から帰った時点ではまだ猪魔獣オツコト処理班は戻っていなかった。

 だから取りあえず戻ってくるまでの間に色々と出来る事を処理しておく。

 昨晩塩漬け処理した小腸の塩抜きとかソーセージを詰める道具の製作とかだ。

 小腸の塩漬けは、取りあえず水洗いした後水にさらして塩抜きをしておく。

 塩抜きの間に工作系魔法杖を駆使してソーセージ製作用の小道具の作成だ。

 ハンドルを回転させて挽肉を腸へ押し出す道具を3つほど作る。

 今回は猪魔獣オツコトの小腸で作るので口金はちょい太めだ。

 他に肉をミンチにする道具なんてのも作っておく。

 これもハンドル回転式。

 粗挽き用と普通の挽肉用と2種類作っておこう。

 あとはかき混ぜて練る道具もあれば便利かな。

 出来るだけ手で触らず作れるように。


 肉が少しでも温度で劣化するとソーセージの出来上がりがボソボソになるらしい。

 当然体温なんてもってのほか。

 だから前世で実作した時は手も肉も氷で冷やしながらやったものだ。

 おかげで手が冷たくて痛かった憶えがある。

 あの時は随分本格的にやらされたなあ。

 講師が地元で有名な肉屋のソーセージ職人だったせいだろうか。

 たかが病院での長期入院児童対象のお遊び行事なのに。

 おかげで前世でしか作った事は無いけれど製法はよく憶えている。

 そういえばと思い出して乾燥機と燻製器のそこそこ大型の物を作成。

 なお今日作った道具は全部後で洗った後インゴットに戻す予定だ。

 こんなに色々持ち帰る程車に物は入らない。


 そうだ、ケチャップを作っておこう。

 トマトとタマネギと調味料を工作系魔法で細かく潰し水飴・塩・酢と混ぜる。

「先輩すみません。これを焦げない程度にずーっと熱してかき混ぜて下さい」

「わかりましたわ」

 なおマスタードは既に購入して準備済み。


 ほどよく塩が抜けた小腸を適当な長さに切って押し出す道具の口金にセット。

 ここは腸に水を入れて膨らませながらやると簡単なんだよな。

 それにしても前世の事なのに良く憶えているな俺は。

 なんて思ってふと気づいた。

 この世界ではどんな方法でソーセージを作るのだろう。

 俺にはこの世界のソーセージの製法に関する基本知識はまるでない。

 でも以前食べた事のあるソーセージはそう前世のものと変わらない気がする。

 厳密には今回のソーセージは太さ的にはフランクフルトだけれども。

 まあ出来上がりが同じようなものならそう製法も変わらないだろう。


「ただいまー」

 肉がやってきた、じゃなくて皆さんが帰ってきた。

「お帰りー。準備は出来ているぞ」

「肉は部位別に分けてきた」

「取りあえず冷蔵庫に入れましょう」

「そうですね。量が多いですから」

 なにせ猪魔獣オツコト2頭分だ。

 完全に肉にした状態でも35210kg以上はある。

 取りあえずは部位名を書いた袋を片っ端から冷蔵庫に押し込んだ。

「やっぱり2頭分は多いよね」

「1人朝昼夜に10軽600gずつ食べれば大体10日で無くなるな」

「そんなに食べないでしょう」

「俺は欲しいぞ」

「私も食べるな」

「私もなのだ」

 身体強化組は燃費が非常に悪い模様。

 なお何気にタカス君も頷いていた。

 奴もこの件に関しては同類らしい。


「それでどうしますか。お昼をこれから作ると食事が遅くなりますけれど」

「折角だから作りたてのソーセージを食べてみたいのだ」

「それもそうだね」

「なら作り始めましょうか」

「そうですね」

「同意」

 そんな訳で早速ソーセージ作りを開始する。


「それにしても何か色々道具が増えているね」

「ソーセージ作りのために作った。出来るだけ手で触らないで作れるようにさ」

「手でこねこねとかしないのか」

「肉の温度が少しでも上がると食感が悪くなるんだ」

「どれくらい作る?」

「まずは1重6kg位作って美味しければ量産しようよ」

 ソーセージ1重6kgと思えばとんでもない量のような気もするが、ここには11人もいる。

 しかも燃費が悪い身体強化組が3人いるし他の皆さんの燃費も決して良くはない。

 俺をのぞいて。

 だから妥当な線だろう。


「なら最初に見本でスタンダードなのを作るからさ。その後に混ぜ具合を変えたりハーブを加える等してオリジナルを作ってくれ」

 そんな訳でまずは作り方の見本を兼ねて俺が作る。

 肉は肩ロース部分を贅沢にも使用。

 赤身と脂は大体8:2の割合で。

 4割は粗挽きで6割普通の挽肉を作って混ぜ合わせる。

「なんでここで氷を加えるの?」

「これくらい水分はあった方がいいんだ。水分が少ないと腸詰めもしにくいしさ。それにどの工程も冷たい状態でやらないとソーセージの食感が悪くなるし」

 胡椒ちょっととセージを少し、岩塩を大体2パーセント程度混ぜてやる。

 岩塩は硝酸塩がちょっと入ったソーセージ向きのを選んでおいた。


 機械でほどよく練れたら押し出す道具にセット。

 腸をセットした口金を付けて絞り出しだ。

 ちょっと肉を出して腸を縛って、後は様子を見ながら詰めて出して詰めて出して。

 昔俺が体験学習で使ったのは羊の小腸。

 今回使っているのは猪魔獣の小腸。

 だから比べるとかなり太い。

 縦に串を刺して焼いたら美味しそうな太いのが1.5腕3m位できた。

 あとはねじって適当な長さにしていけば形は完成。

 用意してある鍋に水を入れて泡が出始める程度の温度にして作ったソーセージを投入だ。

「これで3半時間20分程茹でて冷やして、焼いたら完成」

「見ていると割と簡単そうね」

「肉をよく混ぜる事と温度を低く保つ事、それだけ守れば大体大丈夫かな。あと今は作っていきなり茹でたけれど本当はそこの乾燥機で半時間30分位乾かして、その後同じくらいの時間燻製してやると更にいい感じになる」

「なら早速やってみよう」

 そんな訳でソーセージ、太さ的に言えば極太フランクフルト作成が始まった。

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