第22話 絶好調かつハイな俺様

 そんな感じで海を散々遊び倒して家に戻ってきた。

 裏口に地元の人が置いていった野菜や肉を入れた箱がある。

 よし、テングサを加工して、魚を刺身にして……

 そんな事を考えている俺の目に、箱の一番上に乗っかっている枝豆が目に入った。

 枝豆……これだ!

 色々な巡り合わせに俺の頭が幸福ハッピー興奮状態ウルトラソウルになる。

 そうだ! 小豆がなければずんだだ!

 麦芽糖とずんだで代用したあんみつの完成図が頭の中に浮かんだ。

 完璧だ! 真の調和はここにあった!


「ミタキ大丈夫!?」

 ミド・リーが咄嗟に俺の両腕を掴んで顔を覗き込む。

「大丈夫だ。これで完璧だ!」

「何か大丈夫じゃなさそうだけれど、魔法で見る限りは問題なさそうね」

 そうだ落ち着け俺!

 時間的に麦芽糖が出来るのは明日以降。

 あんみつはそれまでに間に合わせればいい。

 今は刺身と貝に集中すべきだ!


 でもミド・リーに頼んでおこう。

「今日の夕食は俺が作るから、その間に水につけておいた麦、発芽させておいてくれ。芽が3指3cmくらいになればOKだ。時間がかかるなら急がなくてもいい」

「わかった。芽が3指cmくらいになればいいのね」

「ああ。そうしたら乾燥させて、粉々に粉砕する」


「あの海藻はどうするんだ?」

 これはシンハ君だ。

「水でよく洗って、何処かで干しておいてくれ。加工はその後」


「何を作るのか楽しみですわ」

「海藻や麦を使うのは明日の夜になると思います。夕食は取り敢えず東の国の商人に習った料理でも」

 東の日出ずる国、日本だ。

 もちろんこの世界にそんな国は無いだろうけれど。


 主食が米でなくパンなのが悔しい。

 あと醤油が無いのも悔しい。

 本当はワサビも欲しいぞ!

 でもまあその辺は色々工夫して誤魔化すことにしよう。

 知識だけなら任せておけ!

 俺はハイ状態のまま、まずは黒鯛のうろこ落としからとりかかった。


 ◇◇◇


 ハイのまま2時間格闘した結果、ほぼ満足がいくものが出来上がった。

  ○ 黒鯛のポワレ マスタードソース付

  ○ 魚色々のカルパッチョ、皮を剥いだのとか焼き霜作りのとか色々

  ○ あさりのバター焼き

  ○ あさりと魚あら出汁の冷製スープ

  ○ ポテトサラダ

  ○ ブダイの煮こごり(カットの仕方がテリーヌ風)


 煮こごりとか冷製スープとかは魔法を使えれば簡単だ。

 生活魔法レベルの俺の魔法でも充分なくらいに。

 なお他に麦芽糖を作る為の小麦粉ノリとかも用意してある。

 これに麦芽を入れて保温しておけば酵素がデンプンを糖にしてくれるはずだ。

 更に枝豆は鞘を外しておいたので、糖さえ出来ればいつでもずんだが作れる。

 あと村人が多分メインのつもりで入れてくれた鶏肉は茹でて鳥ハム状態にして冷蔵庫保管。

 明日は無理だがここに居る間には出来上がっているだろう。

 さて、俺は召喚呪文を唱える。

「出来たぞー、運ぶの手伝い頼む!」

「待っていたぞ!」

 ちょっと時間がかかったから皆さん待ちくたびれていた模様だ。


「やっぱり料理が上手いな、ミタキは。魚を生で食べるとは思わなかったが、これはいい」

「新鮮でないと無理ですけれどね」

 俺も満足の出来だ。

「でもやっぱり微妙に見た事が無い料理ばかりですわ。一体こんな料理を何処で教わったのかしら」

「これはうちの商会に以前よく来ていた東の国の商人が教えてくれたものですね」

 東の日出ずる国以降省略。


「新鮮な魚を捕ってくれたフールイ先輩やヨーコ先輩のおかげですよ」

「普通は魚料理なんて焼くか塩で煮るくらいだけれどな」

「でも昼に食べたアクアパッツァ美味しかったですよ。だからアレに負けていられないなと言う事で」

「でも私、料理は得意なつもりでしたけれど、初めてのメニューばかりです」

「俺の持ちメニューもそろそろこれで終わりだけれどさ」

 ところでアサリバターの汁をパンに吸わせて食べるの、癖になる美味さだ。

 ポワレをレモンソースごとパンにのせるのも悪くない。


「そう言えば麦とか海藻とかはどんな料理になるんだ?」

「甘いおやつの予定です。ただ明日夜までかかる予定ですね」

「それって石鹸みたいに向こうで量産出来るの?」

「材料さえ持ち込めば簡単です」

「まあ食べてのお楽しみだな」

 それにしてもここの魚は美味しい。

 ウージナも海沿いの街なのだけれども。

 まああの街は商業都市で漁港はちょっと離れているけれどさ。

 俺の中の元日本人の魂が生魚万歳と叫んでいる感じだ。

 刺身はワサビ醤油で食べたいが塩レモンも悪くはない。

 うん、いいぞこれは。

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