第01話 わたしたちの存在
現金な考え、なのかも知れない。
だって、自分たちが仮想世界の住民であったこと、自分たちが単なるデータであったという事実を知ったことで、あれだけの悲壮感やなげやりな気持ちが生じ掛けていたというのに……
それなのに、仮想世界がまだ存在していると分かった途端に、守らねばという気持ちや、さらには自分たちが生きる上での希望のようなものまで、湧き上がってしまったのだから。
でも、冷静に考えて見れば、当然のことなのかも知れない。
こっちの世界も、わたしたちの暮らしていたあちら側も、同じだ。
みな、現実を生きているんだ。
「そう、ここに……地球は、あるんだ」
ぎゅ、
アサキは、自分の小さな拳を強く握り締めた。
この現実世界の宇宙に、遥か昔に存在していた地球。
それがなかったら、わたしたちはいない。
でも、それよりも、この、手の中の雲、仮想世界にある方こそが、我々の、地球なんだ。
真実を知ろうとも、その思いは変えちゃいけない。
でなきゃ、わたしたちの存在とは、なんなんだ。
この中に生きている人たち、生命の存在は、なんなんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます