かいだんかい

     1

 和室大部屋の真ん中。


 座布団に、浴衣姿の正香がすらり綺麗な姿勢で正座している。

 でも顔はちょっと不気味で怖い。すぐ前に置かれたロウソクの灯りが、下から照らしているからだ。


 向き合うように、ロウソクの反対側にはアサキ、治奈、カズミ、成葉、応芽が、やはり浴衣姿で座っている。


「タクシーの運転手が振り返ると、誰もおらず、シートがしっとり濡れ……」


 という正香の話に、


「ぎゃああああああああ!」


 アサキが青ざめた顔で大絶叫している。

 そこまで怖いかよ。びびりだなあ。と、隣のカズミが呆れた感じにぼそっ。


     2

 今度はカズミが、みんなと向き合いロウソクに照らされながら、真顔で喋っている。


「お椀にお湯を注いだんだ、そしたら、触れてもいないのに、勝手に、お椀がすうーっと動き出して……」


「いやあああああああああ!」


 頭を抱えて泣き叫んでいるアサキ、の姿を横目に治奈がアゴを掻きながら苦笑している。

 すっかり、なんでも怖いモードに入っとるけえね。


     3

 カズミの話はまだ続く。


「頭に乗せた下敷きを上げたら、髪の毛がぶわーっと持ち上がって……」


「ぎょおおおおおお! なにかいるんだあ!」


「リモコン押したら、突然テレビの画面が映って……」


「わあああああああっ」


     4

「オシッコ透明なのに便器を見ると黄色……」


「びえええええええええ! ここっ怖いよおおおおお! う、うっ、トイレ、行っといてよかったああああああ!」


 アサキ、あまりの恐怖にすっかり腰の抜けた四つん這いで、ボロボロ涙を流している。


 話しながら、カズミがぼそり、


「からかったあたしが悪いけど……いい加減ブン殴りたくなってきた」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る