魔法使いのせいかさん

【魔法使いのせいかさん】


     1

 白ゴマの中心に、ぽつん、と立っている黒い長髪の美少女。

 おおとりせいである。

 フリルのついた、清楚なドレス姿の彼女は、嬉しそうに、そして恥ずかしそうに、高揚して赤くなったほっぺに両手を当てている。


「緊張しますわ。『まほうつかいのせいかさん』、ああ、つ、ついに、初めて、わたくしのかんむり4コマが。……どんな色に染め上げて行こうかと、悩んでしまいます」


 背後、通り掛かったアサキが、正香に気付がいてぽそり、「冠?」


     2

「冠といえばあああああああああああ!」


 ぐおおおおおおっ!

 と、集中線ビシバシ、突然いきなり不意打ち的にコマ全開の顔面ドアップ、拳握りしめ立て叫ぶアサキ。


     3

 そして、どかーっと右腕を突き上げながら、さらに大きな声で、


「ジローーーーーーーーーッ!」


「うるせええええええええええええっ!」


 ぐしゃあぁあっ!


 カズミの右ストレートが、アイライク演歌に雄叫んでいるアサキの顔面を、後頭部まで突き抜けよとばかりブチ抜いていた。首がもげるような容赦ない打撃に、顔面を醜くぐっちゃぐちゃに歪ませながら吹っ飛んだ。


     4

 チーン


 うつ伏せに倒れて死んでいるアサキ。

 スカートが激しくはだけて下着丸見えなのが、なんともみっともなく憐れみを誘う光景である。


「あースッキリしたあっ」


 後ろ手に組んで伸びをしながら、カズミは満足げな顔で歩き去る。


「あ、あのっ、こちらはまるでスッキリしないんですが。初の、初の冠のはずなのに、初回なのに……出番が、出番がまったく……」


 ぷるぷるぷるぷる、正香が青ざめた顔でアタマヲ抱えて震えている。


「ナルハもそうだったよお」


 いつの間に来たか隣に平家成葉、慰めているのかなんなのか、ははっと楽しげに笑っている。




 なつメロずきのあさきさん  ― 完 ―



 ……って、あれ?

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