第30話 忘却

人は忘れる生き物である


忘れたいと思うことも


忘れたくないと思うものも


いつの間にか


手のひらから零れ落ちていくように



忘れるのは


人の生存のための本能だともいう


辛い記憶を忘れることは


この先の人生を生きるためだと


反面


生きてくために大事にしたい記憶も


消えてしまう



年を取り


認知症になった人は


日々の記憶は定着しないが


遠い昔の


ちょっと覚えていることが信じられないくらい


昔のことを明確に覚えていることが


多々あるという




人はすべての記憶を保存していて


忘れているのは


必要な時に思い出せないだけで


記憶自体が消えてしまったわけではないともいう



しかし


そのどれが何かをコントロールできなくては


消えてしまっていることと大差はない



あの日の事は


あの時あった人は


今この瞬間は


あなたにとって


忘れたい記憶であろうか


忘れたくない大事なものであろうか


生きていくために忘れてしまう記憶であろうか

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