第196話 帰還と情報


 無事に黄昏危険区域レベル4にある基地に戻った僕たちは、その情報を報告していた。代表として、ギルさんがレポートをまとめてくれることになっているのだが、僕はリアーヌ王女に呼び出されていた。


 会議室。


 そこでは彼女が座って待っていた。


「ユリアさん。お疲れ様です」

「いえ。それほど戦ってはいないので」

「そうなのですか?」

「はい。ほとんどシェリーがやってくれました」

「まぁ、そうだったのですか」 


 微かに微笑みを浮かべる。驚いている顔をしているが、それはやはりシェリーの実力がここ最近になってかなり伸びてきているからだろう。


 その原動力は復讐。


 ベルさんを殺した魔人を殺すために、彼女はその刃を研ぎ続けているのだ。もちろんそのことに対して、色々と思うところはあるのだが僕は彼女の意志を尊重したいと思っている。


 話を聞けばベルさんもまた、師匠のために戦っていたという。その連鎖がシェリーのところで終わってくれたらいいと心から祈っている。


「レベル5の黄昏濃度はどうでしたか?」

「そうですね。普通の人間には耐え難いかと。一級対魔師、または特級対魔師レベルでないと耐えることは難しいかもしれなません」

「そうですか……」


 それは素直な感想だった。あの黄昏の濃度では、おそらくは普通の人はひとたまりもないだろう。特級対魔師レベルで耐性があるか、または最低でも一級対魔師レベルでないと対抗することは難しいだろう。


「そうなってくると、なかなか大変ですね……送り込む人材も、かなり数が限られてきます。特に特級対魔師は、今はレベル4まで基地があるということで防衛にも数を回したいですから」

「はい。ただ、僕とシェリー。それにエイラ先輩は特に耐性が強いです。それに僕とシェリーに関して言えば、前衛で戦うことがメインなのでこれからは最前線に向かうことが多くなるでしょう」

「その通りですね。ユリアさんのいう通り、今はそのような方向性で上層部も動いています」


 どうやら、上の方はすでに色々と考えて動いてくれているようだった。僕とシェリーに関しては、これからはさらに最前線で戦うことの覚悟はできている。


「……心配ですね」


 そっと優しく僕の手を握ってくる。


「大丈夫です。僕は絶対に、戻ってきますから」

「ユリアさんがそういうのでしたら、大丈夫ですね」


 お互いに分かっている。絶対など、この世界にありはしないのだと。この黄昏の世界はそれだけ厳しい世界であると。


 しかし、だからこそ言うのだ。言葉にするのだ。


 そうすることでお互いの心にその言葉を、その気持ちを刻むことができるからだ。


 

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