第191話 黄昏危険区域、レベル5へ


「ユリア、早いな」

「そうですね。少し、落ち着かないので早めにきました」


 早朝。


 僕たちはついに黄昏危険区域レベル5の先へと向かう。メンバーの構成としては、僕、シェリー、ギルさんの三人だ。


 集合時間は朝の六時だけど、僕は早く準備が終わったしまったので五時三十分にはこうして集合場所にやってきていた。


 ちょうど夜が明け、黄昏が支配する時間がやってきた。


 そして、僕とギルさんはその場でシェリーが来るのを待つ。


「ユリア。体調はどうなんだ?」

「そうですね。悪くはないです」

「そうか。しかし、レベル5の先か……思えば、遠くまで来たもんだ」


 どこか遠くを見据えながら、ギルさんは感慨深そうにそう言葉にした。確か、今までの人類の進歩のことを考えれば現状はかなり進んでいると言っていいだろう。


 しかしもちろん、それには大きな犠牲が伴っている。


 その屍を乗り越えた上で、僕たちは進み続けなければならない。


「ベルがいれば、きっとここにいたのは俺じゃなかっただろうな」

「……」


 黙ってその話を聞く。ギルさんからベルさんの話を聞くのは、初めてではないがその言葉はとても哀愁が漂っていた。


「いつもそうなんだ。俺はずっと生き残って、他の若い奴が次々と死んでいく。ベルも付き合いが長く、あいつもずっと生き残るもんだと思っていた。けど、黄昏って世界は残酷だよな。あんだけ強いやつでも、死んでしまうんだからな」


 強さとは何か。


 その指針はいまだにかわかっていない。けど、僕はやはり……生き残っている人が強い人なのだと思う。そして、仲間の死を背負った上で進み続ける対魔師という存在は……本当に凄いと痛感するようになった。


「そうですね……僕は前の戦いで、初めてあんなにも多くの仲間の死を間近で経験することになりました。いやその前からずっと、死は見てきました。やっぱり、この黄昏の世界ではそれは当然のことなんだと僕は改めて知りました。でも、亡くなった人の意志を継いでいくことが重要なのだと……僕は、改めてそう思いました」

「ユリアは、大人だな」

「いえ。そんなことは。でも、ベルさんだけでなく、亡くなった対魔師の人には多くのものを与えてもらいました。だからこそ、僕はまた前に進むだけの力が残っていると思います」

「そうだな。あいつらのためにも、俺たちは進み続ける。だから頑張って行こうぜ」

「はい」


 ギルさんがニカッと白い歯を見せながら、拳を僕の方へと寄せてくる。そしてそれをコツンと合わせるのだった。



「ご、ごめんなさいっ! ちょっと準備に時間がかかってっ!」


 視線の先から、シェリーが慌ててこちらに近づいてくる。


 そうして僕らは合流すると、さっそく任務を開始するのだった。

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