第177話 観光案内準備


「ということで作戦会議を開きます」


 会議室。

 

 そこにいるのは、僕、先輩、それにリアーヌ王女だった。


 サキュバスたちを招いたということで、観光案内もすることになってしまった。他に適役がいるのでは? と思うが上からの命令は絶対だ。特級対魔師序列零位と言ってもこればかりはどうしようもない。


「で、どうするのリアーヌ」

「……そうですね。まずは男性を捧げるというのはどうでしょうか?」

「いい案ね。それならユリアなんてどう?」

「まぁ! エイラってばそんな酷いことを考えているのっ!? でも……いいですね。それ」

「でしょ?」

「……」


 まぁ言葉だけ見れば真面目に話しているようにも思えるが、実際のところ二人の会話はどこか芝居がかっていた。


 だから僕も話を遮ることせずに、ただ白い目で二人の話を聞いていた。


「あら? ちょっとおふざけが過ぎましたかね?」

「リアーヌの演技が大袈裟だからよ」

「まぁ! そんなことはありません。ね、ユリアさん?」

「早く本題に移りませんか?」

「こほん。そうですね」


 そしてリアーヌ王女はまずは現状を教えてくれた。


 第一結界都市にいる人間には通達はしていないと。知っているのは軍の中でも上層部だけ。今は別の会議室にて待機してもらっているとのこと。その際に食事を振る舞っているとか。


 そして僕たちに課された任務はサキュバスとの条約を結ぶのに際して、人間のことを気に入ってもらうことだった。


 あとで正式な会議は開かれるそうだが、その前にこの結界都市を紹介しようという話は、実はここを出発する前から計画の中にあったらしい。


 そこで抜擢されたのが、僕たち三人ということだった。


「まずはそうですね。売店で食べ歩きがいいと思います。キャサリンさんも喜んでいましたし」

「そうですね。僕もそれはいいと思います」

「ま、いいんじゃない?」

「でも問題はアレですね」

「アレか……」

「アレね……」


 それはサキュバスの男性を見る視線だ。


 本能的なものなので、仕方がないのだろうがそれはまさに獲物を狩る魔物そのもの。僕もあの視線にはかなり恐怖してしまったほどだ。


 なんというか……男としての尊厳というか、何か大事なものを狙われているようなそんな感覚なのだ。


「まぁそちらはこちらでも考えがありますので……」

「そうなのですか?」

「えぇ。ユリアさんには関係のないことですよ」

「はぁ……なるほど」


 リアーヌ王女の言っていることがいまいち理解出来ないが、この場合はスルーしてもいいだろう。話の進行を妨げるも悪いしね。


「それでは具体的な話ですが──」


 そうしてリアーヌ王女は話を続けていくのだった。

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