春奈12話目の試作品
モンスター討伐というのは何も身体面だけが成長するわけではなく、精神面も成長します。精神的な打たれ強さとか克服心、恐怖に打ち勝つなど、そういう面ですね。
私が、最初はゴブリンですら抵抗感があったのにこの時には既に全然余裕なのには、慣れ以外にもこういう面も存在します。
精神が成長したからって、同族を殺すハードルが下がっているわけではありませんよ。
「春奈さん大丈夫か」
「もう吐き出すものもないです……9階からは私歯が立ちませんでしたし」
そう、9階のサメマン軍団に幾度となく被弾して、結構血を失っているんです。瞬間造血剤の量が足りなかった。サメ歯でチェインメイルもその下のレザーもボロボロ。
10階は死体に耐えきれずに精神的に参ってしまい、イサキ型モンスターの突きすらかわせず。愛ちゃんが徹底的にカットしてくれましたがそれでも被弾しました。もう造血剤がない。
ほぼ人というモンスターの恐怖を本当に味わいました。どうしたって同族殺しの抵抗があるし、死んだら人だもんこれ。
「11階を爆破さえしてしまえば機能停止するから、モンスターも居なくなるはずだ。ここから6階まで降りるのもかなりきつい。行こう」
「はい……」
フラフラと階段を登るとそこは海岸。奥の方に小舟が1
「那須与一の伝説では?どういうこと、これ?何がボスなの?」
「みんな不用意に近づくなよ、何が起きるかわからん」
入口近くでキョロキョロしていると、天から光が。昔の武者衣装に扮している男性が天から降りてきますね。わーお、さすがダンジョンなんでもアリだ。
武者侍、かな、彼は降り立った後、弓を体の前に突き出し
「よく来たな、中ててみろ」
とだけ。
「怪しい……」
みんな躊躇していると
「やらんのか、全員射抜くぞ」
といってその弓で構えだしました。
っ!?撃つまでが早い!矢が来る!
ッシュ!パン!
愛ちゃんが軌道上に躍り出てシールドで叩き落としました。すご……
「ほぅ、なかなかやるな」
「中てるやつ、僕がやるよ」
「愛ちゃん……!」
「じゃあいってくるね(にこっ」
そういってつかつかと前に出て武者侍の弓を受け取り、軽く引いて感触を確かめると、矢をもらい、的の方へ向いて
「あ、胸当てある?さすがに胸があたっちゃうや」
などと申しており。たしかに君は普通のときは結構いい胸をしておるがね、弓道で使う胸当てを持ってくる人がどこに
「あ、私持っております!まれに弓使いますので!」
おっぱい仲間がここにおり申した。
胸当てをつけて、さあ、出番です。
緊張した雰囲気に包まれます。
愛ちゃんは軽く海へ入っていき、ふぅっとため息を一つ吐くと、弓道の型に沿って弓を扱い、射!
パァァン!
「ああ中った!凄いよ愛ちゃん!」
「ふむ、見事なり。名はなんと申す?」
「榊愛」
「そうか、実に素晴らしかった。他にやるものはおらぬか?そこの……ゲロ吐き女などは?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?あの死体を見てゲロ吐かないほうがおかしいってんだよ!…… やってもいいけどさ、弓以外の方法でもいい?それ絶対引けないから。愛ちゃんが身体強化つけてやっとじゃないそれ」
「ふふふ、よく見てるな。まあいいだろう、あの33尺先にある扇をどうにかして落としてみせよ」
にゅっ、と、扇が生えてきました。
「できなくても笑うなよ」
私もズカズカと海に入っていき精神を集中、可能な限りの、可能な限りのイメージをして!
「いけええええ
チュッッッッドーーーーン!!
水中で
「どや」
「凄い!春奈ちゃん凄いよ!」
「時を超えし絆全員につげるが、あの二人は規格外だ、あんまり考えるな」
「これは…… これは…… ははは、カカカカ。面白いものと出会った。ふむ、貴方らであればあの方の舞をお見せしてもよいであろう」
「舞?あの方?」
「もうボスというやらはいない。最初の扇がそうであった。鎧を脱いで、楽な格好で見てほしい。ではな。那須与一の称号を榊愛殿に、目は爆破娘に授けよう。ふふふ、ではな」
すると急に海岸は消え、海もなくなり、私達は板張りの正方形の部屋に全員並んで立っていました。
「幻術!?」
「ではなさそうだよ、春奈ちゃん」
「っかー、子供の頃に来た水遊園が休館になったから、お礼をしにって思って取った依頼がまさかこんななんてなあ」
「お話はもうよろしいですか?」
振り返ると神楽で使うような舞台の上に一人立つ和装の子供が。顔立ちは女性っぽいけど。
「だれかなー」
「ああ、失礼、私、鬼武者と申します。」
「げーむ?」
「源頼朝といったほうが通りはよろしいでしょうか」
「え、なんで鎌倉の……ってダンジョンですもんねえ」
「全世界レベルでもあまり例はきかねーぞ、ダンジョン出現以前の人物が出てきたなんてことは」
「僕は信じるから、話を先に進めよう」
「ありがとうございます。私がここにいるのは、割と私が宇都宮や下野に家臣や戦勝祈願の縁があるからです」
「那須与一もそうだけど3代目宇都宮城主宇都宮
「榊愛殿お詳しいですね。与一に愛されるわけです。さて、私の説明はこれくらいにして、舞を一つ舞わさせていただきます」
「強制?」
「僕が思うに那須与一同様倒せないよ」
「しょうがねえ、みんな見るぞ、鎧脱げ、剣を置け!」
ぬぎぬぎ、正座。さあみよう急ごう。私もうやばいよ、気絶しそう。
「では始めます……」
その舞は見事なものでした。子供の姿で出てきたのもなんとなく理由がわかります。柔軟性が最大限生かされるような舞、今風に言えばアイススケートをゆっくりにして雅な味付けをした感じ。そんな舞を見せてくれました。
手先はきれいに伸び先まで通っていて、足は立つところ曲げるところのメリハリがきき、体は優雅に。
実に素晴らしいい。
「以上です、ありがとうございました」
「私舞とかさ、15でひとりっ子になったから一度も見てなかったんだけど、舞って凄いんだねー」
「体捌きの参考になったよ」
「それでは私は返ります。皆様に青狐の加護がございますように」
「知ってるんですか!?」
「ふふふ、おちゃめな神様ですよ、それでは」
ぽわわわわーん
気がつくと、全員ボス部屋の真ん中で倒れていました。
「あるぇ?先程のは?」
「狐に馬鹿されたかぁ?お前ら狐だし。まあ爆弾置くぞ、10分後に爆破するようになってる。すぐ逃げるぞ」
「んん……?」
「どうした春奈さん!なんかあったか!?」
「あ、うん大丈夫!今準備するね!」
DOGOOOOOOON
「水が止まった。機能停止したみたいだね!」
「ああ、さっさと降りようぜ!」
外には駆除科の役人さんが待機していて、なんか調べる機会で調べた後に、このダンジョン機能停止、と判断されたみたいです。
「これで終わりですね」
「そうだな、一気に登っちまったがもっとゆっくりにすればよかったな。後半の難易度の上昇が急激だった」
「ですね、じゃあこの後祝勝会して終わりましょう!」
「ゲロ吐き女とは呑みたくねーなー!」
「ちょっとー!?」
「ねーなー♪」
「あいちゃんー!?!?」
ひとしきり飲んで、ホテルに帰ってきて
「これ那須与一と鬼武者様からのお礼かな」
左下に倍率、焦点のところに焦点先が何メートルあるかが表示されている。拡大は今の所8倍まで可能
ぽわわわわーん
異空間への入口が開いたのでした。
使えると思ったタイミングは転送?された直後。
若月春奈、ゲロ吐き女の称号を手に入れました。
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