144話 神剣作成と終焉魔法

「神力解放……まさか己の身を犠牲に——!」


「生憎だが、そのつもりはねぇよ。俺はここで死ぬ訳にはいかない」


「成程。覚悟は決まっておると。ならばそれを私に見せてみろ!」


「言われなくてもそうするつもりだ!」


 ——その瞬間、魔王は俺があたかも消えたように感じただろう。


「グハッ!?」


 懐に入られた俺は奴に向けて全力の右ストレートを御見舞した。魔王は弾丸よりも早い速度で吹っ飛ばされていく。

 俺は追撃の為、その場から直ぐに移動し、魔王が飛ばされてくる正面に立つ。


「はっ!」


 俺は奴に向けて全力の踵落としを食らわせる。

 魔王は俺に蹴られて、百メートル近くはあった地面への距離が一気にゼロへとなった。

 物凄い衝撃に地面は割れ、余波がこの王都全域に轟いていた。


「響けよ嵐!吹くは暴風!その全てを我は切り刻まん!〈ラスト・テンペスト〉——ッ!」


 俺はその呪文を唱えると、俺から半径一キロ程に巨大な竜巻が現れる。

 もちろん俺は自分の身を結界で守ってるけど。


 そして竜巻は止み、後に残ったのは俺と魔王だけだった。もう街は跡形もなく破壊されている。


「くっくっ……ふははははははっ!!」


 魔王はいきなり立ったかと思えば、声を出して笑った。


「まさか我が本気になろうとはな!覚悟を決めておけ!勇者よっ!」


 そして魔王は臨戦態勢へと入る。

 背中から禍々しい翼が生える。


「私の一撃、受けれるものなら受けてみるがいい!——〈レド・リクート〉ッ!!」


 魔王が両手を広げたと思ったら、辺りが極寒の吹雪に覆われる。


「これは……」


「これこそ地形変化魔法〈レド・リクート〉!これはこの大陸全てを全て吹雪で包む。効果時間は術者が倒れるまで永久に続く!果たして勇者よ!貴様はこれを耐えられるか!」


 高々と喋ってくれてるけど……爆発的に上昇している俺の魔防のおかげが、全く寒い気配がしない。それとも俺の感覚が麻痺してるのか?


「効かねぇな!なら次はこっちの番だ。〈神剣作成〉——いでよ!レーヴァテインっ!!」


 これが俺の切り札の1つ。神剣作成スキルだ。

 ……これがあったと知った時はもう嘆いたね。だって魔力を媒介にして神剣を作るんだよ?余りに余っている俺の魔力を使ってだよ?どんだけ得なんだよ!ていうか、それだったら最初に作った時に教えてくださいよ検索ツール先輩!!

 そう思う俺は表に出さずに、レーヴァテインを振り抜いた。

 すると、強烈な炎が宙を舞う。それは吹雪をも簡単に溶かし、それでも尚空に留まるほどの圧倒的な熱量だった。


「ぐっ……まさかこれ程とは……私の魔法もそこまで効いておらぬようだな……」


「さぁ、観念して——死ね」


 俺はその一言だけは絶対零度の如く冷たいものだった。


「だが、我にも譲れぬものがある!ここで負ける訳には行かないのだァァァッ——!」


 執念ともおける雄叫びを上げ、ただ魔力を集める。


「我が終焉魔法よ!今その全てを用いて勇者を討ち果たすっ!!我に力を!〈アインソフ・ラグナロク〉ッ!」


 奴はその言葉を唱えると、体に深淵の霧が渦巻く。

 霧が晴れると、奴のイメージにそぐわない金色の鎧を着た魔王が現れる。

 遠く離れていても感じる圧力に、俺は武者震いをしていた。


「さあ勇者よ!互いの全力と全力、どちらが上か今決めようではないか!」


「いいだろう!その勝負買った!」


 そう言い俺は剣を構える。

 そして二人の全力がぶつかり、その衝撃で雲が割れた。


「流石は勇者!我が終焉魔法を用いても倒すことは出来ぬか!なら、これを食らうか!」


 魔王は一度距離を取り、手を上に掲げ!バカげたサイズの黒球を生成した。

 これはまずいな……。あれには魔力がありえないほど篭もってる……攻撃で破るのは無理か……。

 そう察した俺は防御に専念するのであった。


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