103話 VIP席

 俺たちはオークション会場へと向かっていた。

 え?みんなのドレスの感想?そんなの全部似合ってるで済ませたに決まってるだろ?

 だってそれしかないんだもの。


「で、結局オークションってどこでやるんだ?」


 今更ながらの質問をウルティマに問いかける。


「侯爵の別邸で行うそうですよ。だからパーティも兼ねているといったところでしょうね」


「なるほど」


 確かに貴族の屋敷ならそんなことをしても当然だろう。

 俺が予想していたオークション会場で普通そんなことするのか?と思ってたけど、それなら納得する。


「侯爵ってことは結構偉いんだな」


「トオル様ほどではないですけどね」


 ウルティマ氏~。それは言ってやるものではないですよ~。

 俺より偉い人って実質神様ぐらいだろ?

 あれ?勇者って偉いんだよな?そうじゃなかったら色々と成り立たないことがあるし。


 それから約10分後。

 俺たちはオークション会場へと到着した。


「ここが今回のオークション会場のバールズ侯爵邸だよ」


 そこは別荘なのにとてもとても大きかった。

 ちっ……!この成金が!

 別荘に金かけすぎてワロタ。


「では早速中に入りましょう」


 俺たちはウルティマの先導で中へ入っていった。

 ……だって俺が先頭で歩いたら初見は絶対に迷子になるからな。自慢じゃないけど。


「カネヤマ トオル御一行様ですね。VIP席をご用意しております。どうぞこちらへ」


 案内人らしき人が俺たちを案内する。

 ……VIP席って……そんなことしなくても普通の席で十分なのに。流石に立ちっぱは嫌だけど。


「当然です。だってトオル様が出品した品はこのオークションの中でも目玉部分を占めているのですから」


「マジか……」


 そんなに高価な物は無かったような気がするんだけどなぁ……。

 まあ俺には物の価値なんてよく分からないし、鑑定してみて俺の品、すなわちダンジョンのドロップ品が良かったということなんだろうな。


「こちらがVIP席になります」


 そこはオークション会場が一望出来る高さで、中も6人用とは思えないくらい広い。

 ……ていうか貴族の邸宅ってこんなところも作ってるんだ……。俺も今度真似してみようかな?


「それではオークション開始までしばらく時間があるため、ゆっくりとお待ちください。必要ごとがあればそこのベルを鳴らしてもらえれば、すぐに伺います」


「分かりました」


 俺がそう答えると、一礼して去っていった。


「紳士だ……」


「紳士だね……」


「紳士だよ……」


 この中にいる全員が今の人が紳士という感想を抱いた。


「じゃあしばらく時間があるんだし、ゆっくりしますか」


「そうだね」


 俺の提案に全員が賛成した。


「うわ〜!フッカフカだね!」


 エルはベッドを触って喜んでいる。

 この部屋はホテルの一室のようになっており、もちろんのように豪華な作りになっている。

 ……こんなことしなくても良かったのに……。

 そう思っても貴族の皆様は勝手にやってしまうんでしょうね。税金ならもっと別のところに使えばいいのに。

 まあ貴族の風格というのもありそうだから強くは言えないんだけどさぁ……。


『長らくお待たせしました!ただ今より、バールズ侯爵主催によるオークションを執り行いたいと思います!』


「お、始まったようだな」


 俺たちはカウンターのようになっている場所から眺めることにした。

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